世能荘(読み)せののしょう

改訂新版 世界大百科事典 「世能荘」の意味・わかりやすい解説

世能荘 (せののしょう)

安芸国安南郡の太政官厨家領荘園。世能村(現,広島市安芸区上瀬野など),荒山村(同区中野など)を荘域に含み,世能荒山荘と称されることも多い。1193年(建久4)諸司領確保をもくろむ官務小槻隆職(たかもと)の働きかけに応じ,国司平親守は太政官厨家納物米以下の進済地として世能・荒山両村を便補保(びんぽのほ)に指定した。隆職は保経営の不安定さを打開するため再び申請を行い,その結果,四至牓示が打ち定められ,98年高倉法華堂領世能荒山荘の成立をみた。その場合も実質は官厨家領であり,隆職子孫の相伝領掌が続けられた。立荘後も荘務にはさまざまな困難がつきまとい,文永ごろの〈官中便補地由緒注文案〉では〈当時濫妨あるの所々〉のうちに数えられ,〈官中方々の公用,大略無きが如き者也〉と記されている。地頭は鎌倉初期には安芸国守護宗孝親の兼帯とされていたが,承久の乱後に下野国を本貫地とする阿曾沼氏がその跡を襲い,のち当荘を基盤に国人領主としての自立を遂げた。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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