不溶性陽極(読み)フヨウセイヨウキョク

化学辞典 第2版 「不溶性陽極」の解説

不溶性陽極
フヨウセイヨウキョク
insoluble anode

化学的に安定であり,とくに電気化学的にも溶解しにくい陽極.陽極での発生ガスの捕集電解酸化電解採取あるいは電気防食のための電解などでは,その目的上,あるいは電流効率の点などから,陽極の溶解は望ましくないので不溶性陽極が使用される.このような電極に利用できる金属としては,標準電極電位が十分に貴な値をもつものが適当であり,もっとも安全な陽極材料は白金であるが,高価であるため,チタンジルコニウムの表面に白金の薄膜(0.5~0.05 μm)をつけたものが実用化されている.卑な金属でも,特定の環境では表面に保護被膜を生じて不溶性となるもの,たとえば鉛や鉛合金なども使用される.非金属性の不溶性陽極としては,二酸化鉛,磁性酸化鉄などの酸化物電極,あるいは黒鉛電極などが工業的に用いられることが多い.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報