下岡〓杖(読み)しもおかれんじょう

改訂新版 世界大百科事典 「下岡〓杖」の意味・わかりやすい解説

下岡杖 (しもおかれんじょう)
生没年:1823-1914(文政6-大正3)

幕末から明治にかけての写真家。伊豆下田に生まれ,江戸に出て絵画を学び画家として名を成す。オランダ船によってもたらされた銀板写真を見た際,そのすばらしさに感銘してその技術の習得を志し,ハリス領事の通訳ヒュースケンから写真撮影を学んだ。さらにアメリカの写真師ウンシンに湿板を学び,1862年(文久2)横浜に写真館を開設,最初は外国人を主とし,のちには広く一般の客を得て繁栄した。蓮杖の写真館開設は長崎上野彦馬の写真館とともに,日本における写真発展の基礎となったものであり,その功績は大きい。蓮杖は写真のほか石版印刷業,乗合馬車営業などの事業にも足跡を残し,1876年には写真業をやめて浅草に移りキリスト教信仰と画筆を楽しむ余生を送った。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の下岡〓杖の言及

【写真館】より

…その写場には,照明設備とともに,背景になる風景画などの書割りが掛軸式に何種類か吊り下げられるようにしたところが多かった。ところで,こうした写真館は,絵師から写真師に転じた下岡蓮杖(しもおかれんじよう)が1862年(文久2)に横浜で開業したのが最初であるとされる。当初は,〈写真にうつれば病気になる〉などの迷信がまことしやかに語られたりしたため,客は在留外人に限られたが,徐々にそれもうすれ,日本人の客も増えた。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」