万沢郷(読み)まんざわごう

日本歴史地名大系 「万沢郷」の解説

万沢郷
まんざわごう

富士川右岸を下る河内かわうち路沿いの甲斐国南端に位置し、駿河国に接する。天文四年(一五三五)八月一九日には武田氏と今川氏の軍勢が「万沢口」で戦っている(為和卿集)。この地は甲駿を結ぶ交通・軍事上の要衝で、武田氏時代には伝馬宿が置かれた。天正八年(一五八〇)八月一四日の穴山信君伝馬手形写(甲斐国志)によれば、信君の居城江尻えじり(現静岡県清水市)から甲府までの間の宿に対し、源三に伝馬一疋を提供するよう命ぜられているが、当宿は内房うつぶさ(現静岡県芝川町)から受け、南部なんぶ(現南部町)へ継ぐよう指示されている。また永禄一二年(一五六九)鳥居尾とりいお(白鳥山砦か)在番の新衆に対し当郷での狼藉を禁じているのは(同年七月一日「武田家制札写」諸家文書纂)、前年武田信玄が駿河に侵攻、今川氏を駿府から追って北条・徳川両氏と緊張関係にあったことを反映するもので、国境の鳥居尾砦の兵力増強を図ったことを物語るのであろう。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

今日のキーワード

自動車税・軽自動車税

自動車税は自動車(軽自動車税の対象となる軽自動車等および固定資産税の対象となる大型特殊自動車を除く)の所有者に対し都道府県が課する税であり、軽自動車税は軽自動車等(原動機付自転車、軽自動車、小型特殊自...

自動車税・軽自動車税の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android