一種物(読み)いっすもの

精選版 日本国語大辞典 「一種物」の意味・読み・例文・類語

いっす‐もの【一種物】

〘名〙 酒、肴(さかな)を参会者がめいめい一種ずつ持ち寄って開く宴会。また、その肴。平安時代殿上人の間に行なわれたが、室町時代には一般に各人が金を出しあい催す酒宴をいうようになった。いっしゅもの。
日本紀略‐康保元年(964)一〇月二五日「是日於左近陣座諸卿有一種物

ひとくさ‐もの【一種物】

〘名〙 各自一種ずつの肴(さかな)を出しあって催す小酒宴。また、そのさかな。いっすもの。

いっしゅ‐もの【一種物】

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の一種物の言及

【闇汁】より

…明治・大正期の書生たちが盛んに行ったもので,正岡子規も俳誌《ホトトギス》の発行所などでしばしばこの催しを楽しんでいる。 飲食遊戯ないしは遊戯的共食は,いちおう衣食が充足された状況下では必ず起こるもので,日本では10世紀ころから闘飲(とういん)(大酒大食会)とともに頻繁に行われた一種物(いつすもの)がその先蹤(せんしよう)といえよう。これはその名のように,参会者が酒,さかな(肴)などを1種ずつ持ちよって趣向を楽しんだ遊びで,《続古事談》(1219)には〈殿上ノ一種物ハツネノ事ナレドモ,久シクタエタルニ,崇徳院ノスヱツカタ,頭中将公能朝臣ハ絶タルヲツギ廃タルヲ興シ〉と見え,しばらく中絶していたのを,1130年代に藤原公能が再興したといっている。…

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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」