ワルザー(Robert Walser)(読み)わるざー(英語表記)Robert Walser

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ワルザー(Robert Walser)
わるざー
Robert Walser
(1878―1956)

スイスのドイツ語圏作家。ベルン州ビール生まれ。母国とドイツでなかば放浪の生活を送ったが、晩年は精神に異常をきたして筆を折った。独学で詩、戯曲から出発、のちに「小さな形式」とよばれるスケッチ風散文に独自の分野を開拓して、一流文芸誌の寄稿者となる。小説は三編あり、いずれも一見稚拙な文章、放漫な形式の背後に異様なリアリティーを秘めているが、なかでも『ヤーコプ・フォン・グンテン』(1909)は、交錯する夢想と現実の間に生の深淵(しんえん)をのぞかせており、カフカの愛読書として知られている。

[藤川芳朗]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例