ミトゥナ(英語表記)mithuna

改訂新版 世界大百科事典 「ミトゥナ」の意味・わかりやすい解説

ミトゥナ
mithuna

サンスクリットで,1対の男女,さらにその性的結合を意味する。ミトゥナ像はインド美術の各時代にわたって多数の造例があり,この宗教美術の官能的な一面を代表している。ボードガヤーサーンチーなどの古代初期の仏教彫刻では,単に男女が並立しているにすぎないが,グプタ朝時代には接吻したり,体を接触させたものがあり,エローラ,カジュラーホ,ブバネーシュワルコナーラクなどのヒンドゥー教彫刻では性的結合のさまざまな体位を表したものも多い。ヒンドゥー教では性的なエネルギーをも神聖なものとみなし,それを1対の男女で象徴した。また男神は本質を,神妃は現象を表し,男神と神妃との結合は本質と現象との合一を示す。さらに神と人間との抱擁は宗教的歓喜の象徴と考えることもできる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のミトゥナの言及

【ヒンドゥー教美術】より

…肉体の力,とくに性的な力(シャクティ)を神的なものとする考え方は,神妃の観念を発達させ,男神に特定の神妃を配するようになった。女神像,ことに官能的な像容をとるものが多く,男女の性的結合を示す像(ミトゥナ)も作られたのはこのことによる。なお,上述の特質は密教像にもみられるところであるが,それは大乗仏教がヒンドゥー教的な考え方を採り入れて密教となったからにほかならない。…

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