ベナール型対流(読み)ベナールがたたいりゅう(英語表記)Benard convection

岩石学辞典 「ベナール型対流」の解説

ベナール型対流

水平な液層を下から熱し,または上から冷却して上下の温度勾配を与えるとき,温度勾配が小さければ下から上へ熱伝導が行われるだけであるが,温度勾配がある臨界値を超えると,液層はほぼ正六角形の細胞状の渦領域に分かれて,中心部では上向き,周辺部では下向きの流れが生じる現象をベナール対流といい,細胞状の渦をベナール細胞あるいはベナール渦(Benard cell)という.この現象は1900年にベナール(H. Benard)がはじめて実験的な研究を行った.この理論はレイリー(Lord Rayleigh)によって1916年に解析され,現象を支配する無次元数としてレイリー数Raが導入された.Raが臨界値Racをわずかに超えた状態では四角から六角形のほぼ同じ大きさの細胞が一面に現れるが,Raが増加すると細胞は一列に連なって平行帯状の構造を作る.この帯状構造は交互に逆回転するロール状の渦からなり,RaRacの10倍程度になるまでは安定に保たれるが,それ以上になると崩壊して対流は乱流状態になる[長倉ほか : 1998].
温度差による熱対流の駆動力とそれに抵抗する力の比率はレイリー数Raで表される.
 Ra=ρgd3α(T1-T2)/ηk
ここで,ρ:密度,g重力加速度d:層厚,T1:底の温度,T2上部の温度,η:粘性係数,α:定数k:定数,である.レイリー数が限界値を超えると層状の液は不安定になり,細かい局所的な対流の集まりとなる.これをベナール細胞といい,ベナール型対流は流体層の下面を一様に加熱し上面を一様に冷却したときに,局部的に上昇流と下降流が生じたもので,対流の起こる水平の範囲は大体マグマ層の全体の厚さの約2倍程度である.底部と頂上部との温度差でレイリー数が決まるので,薄いマグマの層では限界値を超えて対流が局所化しやすい.レイリー数が限界値をちょうど超す程度では四角から六角形のほぼ同じ大きさの細胞が一面に現れるが,レイリー数が増加すると細胞は一列に連なって平行な長い巻物上の構造になり,交互に逆方向に回転する.レイリー数がさらに大きくなると多数の局所的な対流となる.さらにレイリー数が大きくなると対流は不安定になり乱流が発生する[Sparks, et al. : 1984, 久保ほか : 1992, 鈴木 : 1994].

出典 朝倉書店岩石学辞典について 情報

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