ブロッホ(Ernst Bloch)(読み)ぶろっほ(英語表記)Ernst Bloch

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ブロッホ(Ernst Bloch)
ぶろっほ
Ernst Bloch
(1885―1977)

ドイツの哲学者。ユダヤ人鉄道官吏の息子として、ルートウィヒスハーフェンに生まれる。ハイデルベルク大学でマックス・ウェーバーに学び、ヤスパースルカーチと知り合う。とくにルカーチとは、以後、終生のライバルとなる。第一次世界大戦中はスイスに亡命、平和と社会主義のために活躍する。1918年『ユートピアの精神』を刊行。1920年ドイツに戻る。1922年『トーマス・ミュンツァー』を刊行。このため、1933年、ナチスに迫害され、ふたたびスイスに亡命。この間『この時代の遺産』(1935)を執筆。1938年アメリカに移住。モスクワ亡命のルカーチと「表現主義論争」を展開。他方、主著『希望の原理』を書き続ける。第二次世界大戦後、アドルノによってフランクフルト大学へ誘われるが、謝絶東ドイツライプツィヒ大学に移る。1954~1955年『希望の原理』初版を刊行。しかし、東ドイツ当局とあわず、1961年に、ベルリンの壁が築かれたとき、西ドイツ旅行中の彼は、そのまま亡命、チュービンゲン大学に移籍。1961年『自然権と人間の尊厳』、1962年『異化』、1963~1964年『チュービンゲン大学哲学序説』、1969年『キリスト教の中の無神論』、1972年『唯物論問題、その歴史実体』をそれぞれ刊行。彼の思想は、マルクス主義とメシア的救済思想のアマルガムともいうべきものであり、ベンヤミンやアドルノらとの相互影響、さらには、第二次世界大戦後の旧西ドイツの非教条的反体制派、エコロジー派への影響なども記憶されるべきである。

[清水多吉 2015年4月17日]

『片岡啓治・種村季弘他訳『異化』(1971・現代思潮社/船戸満之他訳・1986/新装復刊・1997・白水社)』『山下肇・瀬戸鞏吉他訳『希望の原理』全3巻(1982/全6巻・2012、2013・白水社)』『池田浩士訳『この時代の遺産』(1982・三一書房/ちくま学芸文庫)』『エルンスト・ブロッホ著、竹内豊治訳『哲学の根本問題』(1972・法政大学出版局)』『樋口大介・今泉文子訳『トーマス・ミュンツァー――革命の神学者』(1982・国文社)』

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