バースカラ2世(英語表記)Bhāskara Ⅱ

改訂新版 世界大百科事典 「バースカラ2世」の意味・わかりやすい解説

バースカラ[2世]
Bhāskara Ⅱ
生没年:1114-?

インド科学において最も有名な天文学者,数学者。7世紀の同名の天文学者と区別するために〈2世〉を付すのが慣例である。ゴートラ家名)をシャーンディリヤというバラモン階級の家系に属し,先祖にも多くのすぐれた学者がいたことがわかっている。彼自身は父親のマヘーシュバラから数学と天文学を学んだ。生地は現在のマイソール地方のビジャープル市である。36歳のとき《シッダーンタ・シローマニSiddhānta-śiromaṇi》と総称される数学と天文学の四部作を完成した。そのうち《リーラーバティーLīlāvatī》と《ビージャガニタBījagaṇita》は,インド数学の二大分野であるパーティーガニタpāṭīgaṇita(既知数のみを用いる数学)とビージャガニタ(未知数を用いて行われる数学)をそれぞれ扱ったものである。狭義の《シッダーンタ・シローマニ》は天文学に関する二部,すなわち惑星の位置計算を主とする《ガニターディヤーヤGaṇitādhyāya》と球面天文学の問題を主として論じている《ゴーラーディヤーヤGolādhyāya》とからなっている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のバースカラ2世の言及

【インド天文学】より

…(3)ブラーフマ学派 ブラフマグプタの《ブラーフマスプタ・シッダーンタ》(628)に代表される。12世紀にインド古典天文学を完成させたバースカラ2世の《シッダーンタ・シローマニ》もこの学派に属する。(4)サウラ学派 8世紀ごろ改編された新しい《スールヤ・シッダーンタ》に基づく。…

【永久機関】より

…西洋では天の運動を除いて永遠なものはないと考えられていたので,地上でのそのような機械の製作は不可能とみなされていたが,すべてを輪廻のもとに考えるインドで,永久機関が着想された。具体的には1150年ころインドの天文学者で数学者だったバースカラ2世が《第一真理論》という書物の中で永久機関の考案を叙述している。彼の考案には2種類あって,その一つは〈軽い木材で車輪をつくり周囲に同じ直径の中空の棒を等距離に取り付ける。…

※「バースカラ2世」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」