バンティング(Sir Frederick Grant Banting)(読み)ばんてぃんぐ(英語表記)Sir Frederick Grant Banting

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

バンティング(Sir Frederick Grant Banting)
ばんてぃんぐ
Sir Frederick Grant Banting
(1891―1941)

カナダの生理学者。インスリンの発見により、1923年のノーベル医学生理学賞を、J・J・R・マクラウドとともに受賞した。初め神学を志してトロント大学に入学したが、途中で医学に転じ、1916年卒業と同時に衛生士官として第一次世界大戦に従軍、戦功十字勲章を受けた。

 1920年から西オンタリオ大学生理学助手。当時、糖尿病は致命的な難病であったが、生理学的には、膵臓(すいぞう)のランゲルハンス島細胞から分泌されるある物質の欠乏が原因であると考えられ、その抽出をめぐって研究者の間で激しい競争が展開されていた。バンティングは、抽出がなかなか成功しないのは、膵液によって、この物質が分解されてしまうためと考え、マクラウド教授の下で、医学生のC・H・ベストとともに、昼夜兼行の精力的実験を続け、1921年7月ついに血糖降下作用をもつ物質の抽出に成功し、翌1922年1月11日には臨床的にもその効果を実証した。ベストの貢献を重視したバンティングは、ノーベル賞の賞金を彼と分け合った。第二次世界大戦にふたたび従軍し、イギリス本国との連絡飛行中、ニューファンドランド上空で事故死した。

[梅田敏郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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