バス(音楽用語)(読み)ばす(英語表記)bass 英語

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バス(音楽用語)」の意味・わかりやすい解説

バス(音楽用語)
ばす
bass 英語
Bass ドイツ語
basse フランス語
basso イタリア語

音楽用語。次の5種の用法がある。

(1)男声なかでもっとも低い声域をさす。その音域はおよそE2~E4である。オペラに登場するバスはその声質や歌唱法によって細かく分類される。おもなものは、〔1〕非常に低い声域で力強く歌うバッソ・プロフォンドbasso profondo(イタリア語)、〔2〕明るく甘い性格をもつバッソ・カンタンテb. cantante(イタリア語)、〔3〕コミカルな役柄に適したバッソ・ブッフォb. buffo(イタリア語)など。

(2)数種の大きさがある同一楽器のなかでもっとも大きいもの、つまり低音域を奏するものにバスの名称が付加される(例、バス・クラリネット、バス・リコーダー)。なお、このような楽器群でバスよりもさらに一オクターブ低い音域に調節される楽器にはコントラcontraやダブルdoubleの語があてられる(例、コントラバスまたはダブルベース、コントラファゴットまたはダブルバスーン)。

(3)バイオリン族弦楽器のなかで最低音域を受け持つコントラバスの略称としてバスの名が用いられることがある。

(4)多声楽曲における最下声部をさす。対位法的楽曲の場合には、他の上声部と同様に旋律的に取り扱われるが、17世紀から19世紀にかけての和声的楽曲の場合には、和声を構成する旋律線として用いられる。バロック期の音楽では、楽曲全体の和声が通奏低音(バッソ・コンティヌオbasso continuo、イタリア語)の上に形成されるため、バス声部はとりわけ重要である。

(5)17~18世紀以降にみられる数種の音部記号のなかで、バス声部のために使用されたものをバス記号または低音部記号という。これはヘ音記号により、五線譜の第四線をF3音と定めたものである。さらに低い音域のためには、第五線をF3音とした低バス記号が用いられる。

[黒坂俊昭]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例