日本大百科全書(ニッポニカ) 「ハインリヒ(3世)」の意味・わかりやすい解説
ハインリヒ(3世)
はいんりひ
Heinrich Ⅲ
(1017―1056)
ザリエル朝第2代のドイツ国王・神聖ローマ皇帝(在位1039~56)。父コンラート2世の死後王位を継いだが、フランケン、シュワーベン、バイエルン、ケルンテンの各大公権力を一手に掌握し、中世ドイツを通じて最強の支配者であった。リウティッツ人、ポーランド人、ベーメン人、ハンガリー人に対し、ドイツ国王の封建的宗主権を広げ、ゴスラーに壮大な王宮を建ててザクセン経営の拠点とし、また教会改革運動を支援し、「神の平和」運動をドイツに導入して国内平和を推進した。1046年にはローマ遠征を行い、鼎立(ていりつ)していた3人の教皇を一挙に廃位、ドイツ人クレメンス2世を教皇の座につけ、教皇権の革新にも力を貸した。だが国内においては、ロートリンゲン大公ゴットフリートの反乱などが起こり、聖職叙任権闘争期の貴族反乱の兆しも生まれた。
[平城照介]