チャップマン(George Chapman)(読み)ちゃっぷまん(英語表記)George Chapman

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

チャップマン(George Chapman)
ちゃっぷまん
George Chapman
(1559ころ―1634)

イギリスの詩人、劇作家。オックスフォード大学に学び、軍隊生活を経験ののち詩作を始め、晦渋(かいじゅう)な哲学詩『夜の影』(1594)を発表。かたわらホメロスの翻訳を手がける。『イリアス』は1611年、『オデュッセイア』は16年にそれぞれ出版され、訳文の華麗で力強い文体は、後の詩人たちに大きな影響を与える。劇作では、海軍大臣一座の座付作者として活躍し、『アレクサンドリアの盲乞食』(1596)、『取次ぎ役』(1602ころ)、『ムシュー・ドリーブ』(1604)など軽快なロマン的喜劇と、『後家の涙』(1608ころ)、ジョンソンおよびマーストンとの合作『東行き!』(1605)など風刺喜劇を書く。一方、当時のフランス宮廷の政事に材をとる二編二部連作悲劇『バイロン公チャールズの陰謀と悲劇』(1608)、および『ビュッシー・ダンボア』(1604)、『ビュッシー・ダンボアの復讐(ふくしゅう)』(1610)は、いずれも興行的に成功を収めるが、台詞(せりふ)は修辞的で登場人物の性格に厚みを欠き、ユマニストとしての作者の思想が生かされていないうらみが指摘される。

笹山 隆]

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