スチュアート(Sir James Denham Steuart)(読み)すちゅあーと(英語表記)Sir James Denham Steuart

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

スチュアート(Sir James Denham Steuart)
すちゅあーと
Sir James Denham Steuart
(1713―1780)

スコットランドが生んだ重商主義の経済学者。準男爵。エジンバラに生まれ、エジンバラ大学で法律学を学んだのち、5年間大陸旅行を行う。そのおり、名誉革命で亡命し王位を失ったスチュアート王家の人々や、その復位を企図するジャコバイトの指導者たちと会い、親交を結ぶ。帰国後1745年にそのジャコバイトの反抗がスコットランドに起こった際、フランスの支援を得るためパリに派遣された。しかし、反抗は失敗に帰したため、その後18年間大陸で亡命生活を送った。その間、経済学の研究に着手し、帰国後67年に『政治経済学原理の研究』An Inquiry into the Principles of Political Oeconomy, 2 vols.を出版した。ヒュームウォーレスの人口論争批判から出発し、人々が剰余を生産して交換し相互協力の関係にたつ自由な商業社会形成の意義を強調した。消費欲望が貨幣と結合して有効需要となり、この有効需要がその生産の主要な動因になるとした。為政者による保護政策の必要を説き、ヒュームの貨幣数量説を批判した。考察は信用や財政に及ぶ。スミス『諸国民の富』はその原理批判の意図をもつ。死後G・チャーマーズの編集による全集六巻が息子ジェームズの編者名で1805年に出版された。

[川島信義]

『中野正訳『経済学原理』全七冊中1~3既刊(岩波文庫)』『加藤一夫訳『経済学原理』全三巻(1980~82・東京大学出版会)』『川島信義著『ステュアート研究』(1972・未来社)』『小林昇著『経済学史著作集V J・ステュアート研究』(1977・未来社)』

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