世界大百科事典 第2版 「シーボルト台風」の意味・わかりやすい解説
シーボルトたいふう【シーボルト台風】
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報
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1828年9月17日(文政11年8月9日)に長崎の西方に上陸した台風。上陸時の中心気圧は948ヘクトパスカル、最大風速は毎秒50メートルと推定され、有明海(ありあけかい)の異常な高潮などのため死者は1万人に達した。シーボルトの名は、この台風により長崎の出島(でじま)付近に停泊していたオランダ商船コルネリス・ハウトマン号が難破し、その中のドイツ人医師P・F・B・von・シーボルトの積み荷から移出禁制品であった日本地図などが発見され、シーボルト事件が起こっていることに由来する。
気象学者高橋浩一郎(こういちろう)は、シーボルト台風を、過去300年間に日本に来襲した台風のうち最大の被害を及ぼした台風と推定した(1962年刊行の日本気象学会機関紙『天気』に執筆した論文「過去300年間のA級暴風雨」に詳述)。台風被害が起きた場合の被害面積と死者数の関係には、個々の台風によって差はあるが、被害面積が大きいと死者数も多くなるという傾向がある。このような相関関係は、観測資料を丹念に調べることにより見出せる。また、観測機器のない時代については、古文書等の記述から台風の様相を推定する方法がある。
[饒村 曜]
線状に延びる降水帯。積乱雲が次々と発生し、強雨をもたらす。規模は、幅20~50キロメートル、長さ50~300キロメートルに及ぶ。台風に伴って発達した積乱雲が螺旋らせん状に分布する、アウターバンドが線状...