日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
シュタイン(Lorenz von Stein)
しゅたいん
Lorenz von Stein
(1815―1890)
ドイツの社会学者、法学者。キール大学で法学を修めたのち、パリで社会運動、社会思想を研究。『現代フランスの社会主義と共産主義』Der Sozialismus und Kommunismus des heutigen Frankreichs(1842)公刊後、キール大学教授(1846)、ウィーン大学教授(1855~1885)を歴任。彼はヘーゲルの国家論の影響下に、共同社会を社会と国家の二つの構成要素に区分した。そして、利益の原理に貫かれた社会では有産者と無産者との間の階級対立が不可避であるのに対し、自由な人格たる国家はこの社会次元の対立過程を社会政策によって緩和すると考えた。こうした立場は一に当時のプロイセンの王政を擁護するものとしてあったが、同時にドイツ行政学確立のための理論的支柱をなした。なお、彼の理論は1882年(明治15)旧憲法起草のため渡欧した伊藤博文(ひろぶみ)を通して、明治期の日本にも大きな影響を及ぼしている。主著に前掲書のほかに『1789年から現代までのフランス社会運動史』Die Geschichte der Sozialen Bewegung in Frankreich von 1789 bis auf unsere Tage3巻(1850)などがある。
[原直樹]