ゴーラクナート(英語表記)Gorakhnāth

改訂新版 世界大百科事典 「ゴーラクナート」の意味・わかりやすい解説

ゴーラクナート
Gorakhnāth

ハタ・ヨーガの創始者。ゴーラクシャナータGorakṣanāthaとも呼ばれる。在世は9世紀や13世紀など大きく離れた年代が伝えられているが,思想史的には密教カビールの時代の神秘思想の中間に位置する。ハタヨーガ教説に関するサンスクリット語文献28,ヒンディー語文献40,マラーティー語とベンガル語の文献多数がゴーラクナートの著作と伝えられるが,それらの大多数はゴーラクナートの教えを弟子たちが編纂したものであること,彼の教えが多数の教派に受け継がれてその内部資料のみが今日に伝えられていることなどのために,真作をえり分けるのが困難である。そのなかで,《シスヤー・ダルサンSisyā Darsan(教説の鏡)》と《サブディーSabdī(教説頌歌)》は,ゴーラクナートの思想をよく伝える信頼度の高い文献である。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のゴーラクナートの言及

【ハタ・ヨーガ】より

…ヒンドゥー教の一宗派ナート派が伝えてきたヨーガで,13世紀ころの北インドの聖者ゴーラクナート(ゴーラクシャナータ)が開祖であると伝えられる。シバ派のタントリズム(タントラ)の教義にのっとり,気息という一種の生命エネルギーを利用し,クンダリニーという蛇の形をとって脊椎の最下部に潜んでいる性力(シャクティ)を覚醒させ,エネルギーの溜り場であるいくつかのチャクラを経由させながら脊椎沿いに上昇させることを目ざす。…

※「ゴーラクナート」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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