グレイブス(読み)ぐれいぶす(英語表記)Morris Graves

日本大百科全書(ニッポニカ) 「グレイブス」の意味・わかりやすい解説

グレイブス
ぐれいぶす
Morris Graves
(1910―2001)

アメリカの画家青年期に郵便船の船乗りとして極東への航海を経験し、東洋思想を吸収した特異な存在。オレゴン州フォックバレーに生まれる。マーク・トビーから受けた強い感化のほかはほとんど独学で、1930年代の不況期には連邦美術計画に参加。その後、中国絵画の抽象的で神秘的な空間に接近、鳥をモチーフとする幻想的なイメージを数多く描いた。アメリカ美術の時流に背を向けて犀利(さいり)で繊細な詩情をうたう孤高の画家であったが、60年以降は具象的なイメージをほとんど放棄して、抽象的な立体作品も手がけ、より緊張度の高い象徴性を示す作風となった。

桑原住雄・小西信之]

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