カエンボク(英語表記)African tulip-tree
Spathodea campanulata Beauv.

改訂新版 世界大百科事典 「カエンボク」の意味・わかりやすい解説

カエンボク
African tulip-tree
Spathodea campanulata Beauv.

熱帯アフリカ原産のノウゼンカズラ科の常緑高木で高さ20mになる。葉は対生し,奇数羽状複葉で大きく,長さ40cmに達し,通常は3~6枚の小葉を有する。小葉は卵状長楕円形,長さ4~12cmで,紙質,先端はとがり,縁に鋸歯はなく,裏面の脈上に短い毛を有する。枝端に生じる密な散房状総状花序に,多数の上向する大型の花をつける。花冠は鐘形で長さ7~8cm,赤色または橙赤色で縁は橙色になり,口部は反曲する。萼は多量の水をたくわえ,最初は倒披針形で鎌曲りしているが,後には前面で仏焰(ぶつえん)状に裂開し水を放出し,長さ5~7cm。花糸は黄色。おしべは4本。果実はBD果(さくか)で,長楕円状披針形,長さ15~20cm,幅3.5~5cm,種子の翼は膜質。

 花が大型で樹冠に群がり咲き美しいので,全世界の熱帯域で街路樹や庭園樹として広く観賞用に植栽されている。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「カエンボク」の意味・わかりやすい解説

カエンボク
かえんぼく / 火焔木
[学] Spathodea campanulata Beauv.

ノウゼンカズラ科(APG分類:ノウゼンカズラ科)の常緑高木。英名のアフリカン・チューリップ・ツリーの名でも知られる。熱帯アフリカに3、4種分布する。枝を張り高さ20メートルに達する。葉は対生し奇数羽状複葉で、小葉は全縁、花は頂部の枝先につき緋紅(ひこう)色で大きく、多花性の円錐(えんすい)花序か総状花序である。美しい花をつけるため熱帯、亜熱帯の各地で日陰樹、観賞用によく植栽される。栽培は温室内に置き、初めは小鉢で育てるが、順次大きな鉢に植え替えていく。冬は10℃以上を保ち日によく当てる。繁殖初夏のころ挿木で殖やす。日本では花を咲かせるのはむずかしい。

[坂梨一郎 2021年10月20日]

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