オーデュボン(英語表記)John James Audubon

改訂新版 世界大百科事典 「オーデュボン」の意味・わかりやすい解説

オーデュボン
John James Audubon
生没年:1780か85-1851

鳥類研究家,画家サント・ドミンゴ(現,ドミニカ共和国)に生まれ,ニューヨーク死去。1791年フランスに移り,そこで幼少年期を過ごし,絵をダビッドJ.L.Davidに師事した。20歳でアメリカに渡り,北はラブラドル,南はフロリダテキサスケンタッキーペンシルベニアなどまで移りすむ。インディアンとも生活をともにし,みずから狩猟して接した489種1065羽の鳥から435枚の大版写実画を《The Birds of America》全4巻(1827-38)として出版。これは鳥の動作や背景の詳細な画法で著名。また哺乳類を描いた《The Viviparous Quadrupeds of North America》全3巻(1845-48。J.Bachmanと共著)もある。これらの経験から野生鳥獣の捕殺や自然破壊を憂え,その保護を主張した。

 その弟子グリンネルG.B.Grinnellは,1885年オーデュボン協会を設立,1905年にナショナル・オーデュボン協会National Audubon Society(本部ニューヨーク)が発足した。その後各地に100以上の支部,青少年ジュニアクラブなどができ,野外指導や夏期学校も行われ,アメリカの野生生物保護,自然保護の枢軸機構となった。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「オーデュボン」の意味・わかりやすい解説

オーデュボン
おーでゅぼん
John James Audubon
(1785―1851)

アメリカの鳥類研究家で画家。西インド諸島ハイチの生まれ。4歳のとき父とともにフランスに渡り、7歳から絵を習った。18歳でアメリカに渡り、フィラデルフィアの近くにあった父の農場で仕事をしながら英語の勉強と鳥の研究を始めた。22歳のときケンタッキー州へ移り、商売を始めたが思わしくなく、貧窮のうちに鳥の絵を描き続けた。描き方は鳥の羽の1枚1枚を詳しく描く細密ペン画法で、鳥の生態に忠実なことを目ざし、野外観察と採集に多くの時間を費やした。初めは一般に理解されなかったが、1838年に、12年がかりで描き上げた435枚の大版細密鳥類画集『アメリカの鳥類』を刊行して不動の地位を築いた。没後1905年に彼を記念してオーデュボン協会が設立された。当初は鳥の愛好家や鳥類保護を目ざす人たちの集まりだったが、やがてアメリカ全土に500弱もの支部ができるほどに発展し、今日では原子力問題など、環境全体の保全を目ざして活動するようになり、対象も全世界に及んでいる。日本でも近年オーデュボンが改めて見直されるようになった。フロリダのキー・ウェストには彼の家と絵が保存されている。

[藤原英司]

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「オーデュボン」の意味・わかりやすい解説

オーデュボン
Audubon, John James

[生]1785.4.26. ハイチ,レカイ
[没]1851.1.27. ニューヨーク
アメリカの博物学者,動物画家。少年時代をフランスで過し,1802年 J.ダビッドに素描を学ぶ。 18歳のとき実業につくためアメリカに渡ったが事業に失敗し,次第に鳥を描くことに関心が高まった。 26年,鳥類図集の出版を志してヨーロッパに渡り,R.ハーベル・ジュニアのロンドン商会から『アメリカの鳥類』 The Birds of America (1827~38) を刊行。これは 435点の手彩色銅版画を収めた大判のフォリオで,これによって彼は一躍名を知られるようになった。その後さらに『北アメリカの哺乳類』 Viviparous Quadrupeds of North America (45~48) の制作を始めたが,業なかばにして没した。彼の動物画は常に生物学的精確さに裏づけられているが,生命あるものをドラマチックな情景においてとらえ,単なる標本画に陥らなかった。

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百科事典マイペディア 「オーデュボン」の意味・わかりやすい解説

オーデュボン

米国の鳥類学者,画家。フランスでダビッドに絵を学んだが,鳥類に興味をもち,1803年渡米後,鳥の絵を描く。1927年―1938年435枚の大版銅版画集《アメリカの鳥類》全4巻を刊行し,鳥類生態画の祖としての名声を得る。ケンタッキーにオーデュボン記念州立公園があり,また弟子によって設立されたオーデュボン協会はアメリカの野生生物保護の中心的役割を果たしている。

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世界大百科事典(旧版)内のオーデュボンの言及

【絵本】より

…その他,オランダ,オーストリア,ハンガリーなどにも近年注目すべき画家たちが現れている。
[アメリカ]
 アメリカは古くJ.J.オーデュボンの《アメリカの鳥類》(1827‐38)を遠い先駆として,近代的な絵本の展開はガアグWanda Gág(1893‐1946)の《100まんびきのねこ》(1928),そしてアンガスのシリーズのフラックMarjorie Flackまで待たねばならない。そのころから全国的な公共図書館活動とオフセット印刷の普及,ディズニーのアニメーション映画の大成功に刺激されて,絵本は表現に飛躍的な発展をみ,一時に花ひらいた。…

【博物学】より

…画工では石版技法を図鑑に応用して成功を収めたE.リア,グールドJohn Gould(1804‐81)らが出た。アメリカでは全博物図鑑中の最大傑作といわれるJ.J.オーデュボン《アメリカの鳥類》がほぼ同時期に出版されている。一方,博物学書は文芸作品と同じ感覚でも鑑賞されるようになり,G.ホワイトの《セルボーン博物誌》を先駆けとして,J.H.ファーブル《昆虫記》やE.T.シートン《動物記》のような人気作品が書かれた。…

※「オーデュボン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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