ウォルトン(Ernest Thomas Sinton Walton)(読み)うぉるとん(英語表記)Ernest Thomas Sinton Walton

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

ウォルトン(Ernest Thomas Sinton Walton)
うぉるとん
Ernest Thomas Sinton Walton
(1903―1995)

アイルランド物理学者。アイルランド南海岸にあるダンガーバンで生まれる。牧師である父のために各地を転々とした。1922年ダブリンのトリニティ・カレッジに入り、数学と物理学の実験科学を専攻した。1926年卒業、翌1927年キャベンディッシュ研究所のE・ラザフォードのもとで仕事をするためにケンブリッジ大学へ行った。

 1919年ラザフォードがラジウムから放出されるα(アルファ)粒子を使って窒素原子核変換をおこさせたのち、天然の放射線源を利用して多くの原子核実験が試みられた。しかし、天然の放射線源は強度が低く、そのエネルギーにも限界があったため、人工的に荷電粒子を高速度に加速する装置加速器)の開発が望まれた。ウォルトンは、初め間接的な方法で高速荷電粒子を生成する装置の研究を通してこの問題を追究した。コッククロフトと共同してからは、最初300キロボルトに加速した粒子の生成を目標としたが、コンデンサーと整流器を組み合わせた電圧増倍回路の使用によって、約10マイクロアンペアの強度をもつ粒子を約700キロボルトまで加速できた。この直接的な加速方法の装置を使用して1932年リチウム原子核の変換実験に成功した。この業績によりコッククロフトとともに1951年ノーベル物理学賞を受賞した。

[日野川静枝]

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