もんじゅ廃炉(読み)もんじゅはいろ

知恵蔵 「もんじゅ廃炉」の解説

もんじゅ廃炉

福井県敦賀市に建設された日本原子力開発機構(JAEA)の高速増殖原型炉もんじゅ」が、廃炉となること。2016年12月に、政府の原子力関係閣僚会議で正式決定した。1兆円以上の事業費が投入されてきたが、20年以上の間、稼働したのはわずか250日となる。
もんじゅは、プルトニウムウラン燃料に、消費した以上の燃料を生成する高速増殖炉原型炉として計画され、85年に本体工事に着工した。名称は知恵をつかさどる文殊菩薩にちなんでいる。94年に初臨界に達し、95年8月に初発電に至るが、12月には数百トンもの冷却材金属ナトリウム漏洩(ろうえい)する事故を起こした。その後改造工事などが行われたが、工事ミスなどが相次いだ。運転再開を不安視する声も強かったが、2010年5月に運転を再開。しかし、トラブルや操作ミスが頻発し、それらの公表が遅れるなど、問題が続出した。8月には燃料交換片付け作業中に炉内中継装置の落下事故を起こし、現場の管理職が自殺するなどの事態に至り、復旧には12年までかかった。その後も1万点もの保安機器の点検漏れなどが発覚し、原子力規制委員会はもんじゅの無期限使用停止を決めた。
原子力規制委員会は、JAEAにはもんじゅを安全に運営できる能力がないとしたものの、新しい運営主体と目していた電力会社メーカーから引き受けを事実上拒否されたこと、もんじゅを再運転するには準備8年、数千億円の費用を要することなどから、廃炉を決定した。廃炉作業は17年度から使用済み核燃料の取り出し作業を開始し、最終的な作業完了は35年頃となる。

(金谷俊秀 ライター/2017年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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