ｐＨ（読み）ピーエッチ

精選版 日本国語大辞典

ピー‐エッチ【ｐＨ】

〘名〙 水素イオンの濃度を示す指数。ペーハー。

出典　精選版 日本国語大辞典

改訂新版　世界大百科事典

pH (ピーエッチ)

水溶液中の水素イオンの濃度をC_Hmol/lとし，C_H＝10⁻^xで表すとき，Xを水素イオン指数hydrogen ion exponent，または水素指数hydrogen exponentという。その記号は累乗（またはべき）powerの頭文字のpと水素HをとりpHと書き，ピーエッチまたはペーハーと呼ぶ。pHの概念は1909年にデンマークの生化学者セーレンセンS.P.L.Sørensen（1868-1939）によって提案された。たとえばC_H＝0.1mol/lのときはC_H＝10⁻¹であるから，XすなわちpHは1となる。同様にC_H＝0.01mol/lのときは，C_H＝10⁻²であるからpHは2となる。XはX＝pH＝－log₁₀C_Hのようにも書きなおされる。厳密には，水素イオン濃度ではなく，有効濃度ともいうべき水素イオンの活量（または活動度）a_Hで定義される。すなわち，pH＝－log₁₀a_Hである。水素イオンの濃度はモル濃度ではなく重量モル濃度（mol/kg）でも表される。pHは普通は0から14の範囲で定義される。この範囲は，25℃における水の水素イオンと水酸イオンの濃度の積（イオン積）［H⁺］［OH⁻］が1.008×10⁻¹⁴であることによる。この値から水素イオンの濃度を測れば［OH⁻］が求められる。水のイオン積は温度によって異なり，中性のpHは0℃では7.5，25℃では7，60℃では6.5となる。

　pHは酸性または塩基性（アルカリ性）の強さの尺度である。25℃では，7を中性（水のイオン積において［H⁺］＝［OH⁻］＝10⁻⁷）として，7より小さいpHの値は液が酸性（［H⁺］＞10⁻⁷）であることを示し，小さな数値のほうがより酸性が強いことを意味する。7より大きなpHの値は，その液が塩基性であることを示し，大きな値のほうがその液の塩基性がより強いことを意味する。酸や塩基の濃度を正確にきめるためには，化学分析（中和滴定など）による方法がある。中和滴定のさいにその反応の終点を求めるためにもpH測定が行われる。一方，pHの測定値から即座に液中の水素イオンの濃度がわかるということも，また実際には便利である。ほぼ完全に解離している酸，塩基の希薄な溶液については，pHの値からその濃度を知ることが可能である。たとえば塩酸の0.001mol/lのpHは3であり，またその逆についてもいえる。しかし酸や塩基がその一部分しか解離していない場合には，pHの測定値のみからすぐに酸や塩基の濃度を知ることはできない。たとえば，酢酸の水溶液のpHが3であるからといって，その濃度が0.001mol/lであるとはいえない。その理由は，酢酸は常温の水の中で溶けている酢酸のうち約1.3%しか解離していないからである。したがってpHが3の値を示した酢酸の水溶液は，およそ0.077mol/lの濃度である。

　pHの測定は電位差測定，比色，pH試験紙などにより行う。最近では，ガラス電極による電位差測定が広範囲に行われている。しかしpHが0や14のような両端を正確に測ることは難しい。測定のさいにはJISにより定められた緩衝溶液に基づき，pHメーターを較正しながらpHの値を求める。
執筆者：橋谷 卓成

出典　株式会社平凡社「改訂新版　世界大百科事典」

百科事典マイペディア

pH【ピーエッチ】

水素イオン濃度の表示法。水素イオンのモル濃度（溶液１l中のモル数）［H(+/)］の常用対数に負号をつけたもの，すなわちpH＝−log［H(+/)］（これをphと書いて，pHとしては水素イオンの活量で定義することもあるが，その違いは0.1以内である）。ペーハー，水素イオン指数とも。中性溶液はpH＝７，酸性溶液はpH＜７，塩基性溶液はpH＞７。
→関連項目塩基性｜酸性｜酸性雨｜水素イオン濃度｜水汚染

pH【ペーハー】

→pH（ピーエッチ）

出典　株式会社平凡社

知恵蔵

pH

「水素イオン指数」のページをご覧ください。

出典　(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

pH
ペーハー

溶液中にある水素イオンのモル濃度の逆数の常用対数記号。ピーエイチ，水素指数ともいう。すなわち水素イオンのモル濃度を［H⁺］とすると，－log［H⁺］で表される。
1909年にデンマークの生化学者 S.P.L.セーレンセンによって定義された。1気圧，25℃の水溶液では pH値 0～7が酸性，7が中性，7～14がアルカリ性を示す。（→水素イオン濃度）

pH
ピーエイチ

「pH」のページをご覧ください。

出典　ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典

化学辞典 第2版

pH
ピーエッチ

水素イオン指数(hydrogen ion exponent)の記号．[別用語参照]水素イオン濃度，イオン指数

出典　森北出版「化学辞典（第2版）」

日本大百科全書(ニッポニカ)

pH
ぴーえいち

→水素イオン濃度

出典　小学館　日本大百科全書(ニッポニカ)

世界大百科事典（旧版）内のｐＨの言及

【フェニル】より

…ベンゼンC₆H₆から水素1原子を除いて得られる最も簡単な1価の芳香族炭化水素基C₆H₅－。Phまたはφと略記することも多い。たとえばフェノールC₆H₅OHはPhOHまたはφOHとなる。【竹内 敬人】…

【酸･塩基】より

…したがって[H^＋]＞[OH^－]のときが酸性，[H^＋]＜[OH^－]がアルカリ性ということになり，酸性であるかどうかは[H^＋]＞10^－7が目安となる。このことは20世紀に入って，酸塩基指示薬について詳細な研究を行ったセーレンセンS.P.L.Sørensen(1868‐1939)によって導入されたpHの概念によって広く用いられるようになった。pHは－log[H^＋]をあらわす記号であり，[H^＋]＝10^－7であればpH＝－log[H^＋]＝7であるから，pH＝7であることは中性，7以下で酸性，7以上ではアルカリ性であるということになる。…

【pH】より

…水溶液中の水素イオンの濃度をC_Hmol/lとし，C_H＝10^－Xで表すとき，Xを水素イオン指数hydrogen ion exponentまたは水素指数hydrogen exponentという。その記号は累乗(またはべき)powerの頭文字のpと水素HをとりpHと書き，ピーエッチまたはペーハーと呼ぶ。pHの概念は1909年にデンマークの生化学者セーレンセンS.P.L.Sørensen(1868‐1939)によって提案された。…

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出典｜株式会社平凡社「世界大百科事典（旧版）」