R.E.M.(読み)あーるいーえむ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「R.E.M.」の意味・わかりやすい解説

R.E.M.
あーるいーえむ

アメリカのロック・グループ。メンバー全員がジョージア州アセンズ出身。グループ名は夢に支配されている睡眠中の意識の状態(Rapid Eye Movement)の意味である。1980年代のアメリカのインディーズアンダーグラウンド・ムーブメントの牽引者であり、1990年代にはアメリカン・ロックを代表するビッグ・グループに成長した。

 1982年、5曲入りEP『クロニック・タウン』で、パンクバーズ等に影響されたガレージサウンド(1960年代後半にアメリカのティーンエイジャーにより演奏された音楽。ガレージを練習場所にしたことが名前の由来)のバンドとして学生街から登場する。メンバーはマイケル・スタイプMichael Stipe(1960― 、ボーカル)、ピーター・バックPeter Buck(1956― 、ギター)、マイク・ミルズMike Mills(1958― 、ベース)、ビル・ベリーBill Berry(1958― 、ドラム)。デビュー・アルバム『マーマー』(1983)に収録された「ラジオ・フリー・ヨーロッパ」が批評家の注目を集め、また当時勃興してきたカレッジ・ラジオで大ヒットする。大都市出身でもなく、メジャー・レーベルのバックアップも受けずに、彼らが精力的にツアーとレコード制作を行ったことの意義は大きい。

 2作目『夢の肖像』(1984)では荒削りだったサウンドが整理され、暗く幻想的なスタイプのボーカル・スタイル、1960年代フォーク・ロックのリメイクやガレージ・サウンドによる浮遊感のあるバンド・サウンドで個性を明確に打ち出した。1960年代フォーク・ロックの名プロデューサー、ジョー・ボイドJoe Boyd(1943― )を迎えて制作された『玉手箱』(1985)は、1980年代の新しいアメリカン・ロックの名作である。『ライフス・リッチ・ページェント』(1986)、『ドキュメント』(1987)でアルバムのセールスとバンドの知名度は上昇した。また、ウォーレン・ジボンWarren Zevon(1947―2003)など旧世代のシンガー・ソングライターとのコラボレーションや新人の発掘等も積極的に行い、活動も広がっていった。1980年代後半の彼らの活躍がアメリカのインディーズのレベルを底上げし、1990年代のオルタナティブ・ロック興隆への道を開いたことは注目に値する。

 1988年にワーナー・ブラザースと契約し、バンドの歴史は新しい段階に入る。『グリーン』(1988)で彼らの音楽はさらに広がり、『アウト・オブ・タイム』(1991)からは大ヒット曲「ルージング・マイ・レリジョン」が生まれる。『オートマチック・フォー・ザ・ピープル』(1992)はバンドがデビュー当初からもっていたフォーク・ロックの暗く夢幻的な音楽性がより成熟したことを証明した。以後、ガレージ・サウンドを再構築した『モンスター』(1994)などのアルバムを発表、どれも高い評価と好セールスを記録する。1996年にはロック・バンドとしては史上最高額の8億ドルの契約更新をして話題になる。1997年ドラマーのベリーが脱退したが、残りの3人を軸にグループは活動を続ける。2007年には「ロックン・ロール・ホール・オブ・フェイム」(ロックの殿堂)の仲間入りを果たすが、2011年に解散を発表した。

[中山義雄]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

焦土作戦

敵対的買収に対する防衛策のひとつ。買収対象となった企業が、重要な資産や事業部門を手放し、買収者にとっての成果を事前に減じ、魅力を失わせる方法である。侵入してきた外敵に武器や食料を与えないように、事前に...

焦土作戦の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android