HEMT(読み)ヘムト

デジタル大辞泉 「HEMT」の意味・読み・例文・類語

ヘムト【HEMT】[high electron mobility transistor]

high electron mobility transistor異種半導体間のヘテロ接合面において、電子が高速で移動する性質を利用した半導体素子ガリウム砒素GaS)とアルミニウムガリウム砒素の組み合わせが知られる。高電子移動度トランジスター
[補説]ヘテロFETHFET)またはヘテロ接合FETHJFET)とよばれることもある。→エフ‐イー‐ティー(FET)

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

日本大百科全書(ニッポニカ) 「HEMT」の意味・わかりやすい解説

HEMT
えいちいーえむてぃー

高電子移動度トランジスタHigh Electron Mobility Transistorの略。ガリウム・ヒ素(GaAs)半導体とアルミ・ガリウム・ヒ素(AlGaAs)半導体をヘテロ接合(異種の原子の接合)させ、電子を供給する領域と電子が走行する領域を分離して、電子のドナー不純物による散乱を避けて、高速を得るとともに雑音を低減したトランジスタで、1980年(昭和55)に富士通(株)で開発された。構造は半絶縁性のGaAs基板の上にバッファ層、ついで厚さ0.3マイクロメートルの不純物濃度がきわめて薄いアンドープGaAs層、さらにその上にAlGaAs層を成長させる。後二者はヘテロ接合構造で接しており、この部分に原子の20層程度ときわめて薄い二次元電流チャネルを接合面に沿って形成する。このため、普通のバルクを用いた三次元チャネルのトランジスタに比べると、電子の移動度は10K(Kは絶対温度ケルビン)で100倍、100Kで10倍、常温でも2倍と大きくなり、高速のトランジスタ動作が得られる。スイッチング素子では伝達遅延時間がピコ秒(10-12秒)のもの、マイクロ波素子としては十数ギガヘルツで雑音指数は1デシベル程度のものが得られ、衛星通信に利用されている。

[岩田倫典]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

知恵蔵 「HEMT」の解説

HEMT

半導体のヘテロ接合の界面に発生する、高い移動度(変調ドープ構造)の電子を利用する電界効果トランジスタ。一般には、ヘテロ接合ゲート・トランジスタと呼ばれる。また、MODFETともいう。1980年に富士通研究所で開発された。高速かつ低雑音で動作させることができる。ガリウム・ヒ素/アルミニウム・ガリウム・ヒ素を用いたHEMTは、衛星放送受信の初段増幅器として広く実用化されている。また、インジウムリンを基板としたインジウム・ガリウム・ヒ素のほか種々の混晶を用いたものが開発されている。

(荒川泰彦 東京大学教授 / 桜井貴康 東京大学教授 / 2007年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

化学辞典 第2版 「HEMT」の解説

HEMT
エッチイーエムティー

high electron mobility transistorの略称.[同義異語]HEMT(ヘムト)

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android