Castleman病

内科学 第10版 「Castleman病」の解説

Castleman病(その他のリンパ増殖性疾患)

(1)Castleman病
定義
 Castleman病(CD)は,形質細胞の多クローン性増殖性疾患であり,リンパ節腫脹と多クローン性高ガンマグロブリン血症を特徴とする.おもに縦隔の孤発性病変を呈する単発性CDと全身リンパ節腫脹を呈する多発性CDがある.IL-6の過剰産生による全身性の炎症反応が特徴的である.
病因
 単発性CDの病因は不明である.多発性CDは欧米ではHIV感染者に多く,その場合ほぼ100%ヒトヘルペスウイルス8型(HHV-8)がリンパ節の細胞に感染している.HHV-8のIL-6(vIL-6)がIL-6産生異常を引き起こし,多クローン性の形質細胞増生と炎症反応を惹起すると考えられている.HIV非感染者の多発性CDでもHHV-8は4割ほど陽性とされるが,日本人ではいずれのウイルスも陰性であることが多い.
疫学
 単発性CDは40歳代に,多発性CDは60歳代に多いが,ともに性差はない.上記のような感染症に伴うことが多い.
病態
 単発性CDと多発性CDでは異なる点が多い(表14-10-19).
臨床症状
 炎症反応は単発性CDよりも多発性CD に多い.悪性リンパ腫でのB症状(38℃以上の発熱,半年間で10%以上の体重減少,盗汗)が多く,CRPやフィブリノゲンなどの急性期蛋白の産生促進に伴い低アルブミン血症による著明な全身浮腫と体液貯留を伴うことがある.単発性CDは縦隔・腹部の巨大リンパ節腫脹を伴うことが多く,そのための圧迫症状として,上大静脈症候群,腎後性腎不全を起こすことがある.
検査成績
 リンパ節の病理像は,単発性CDでは硝子血管型を,多発性CDでは形質細胞型を通常呈する.硝子血管型は,反応性濾胞間に小型リンパ球・形質細胞の増生,線維化,血管増生と硝子様物の沈着を認める.形質細胞型は,小型反応性の濾胞周囲に著明な形質細胞の増生を認める.ともにリンパ球・形質細胞は多クローン性(κ/λともに一部陽性)である.多クローン性の高ガンマグロブリン血症,炎症反応,低アルブミン血症,血清IL-6と血管内皮増殖因子(VEGF)の高値を呈する.可溶性IL-2受容体は高値,FDG-PETではリンパ節病変が陽性となることが多い.
診断
 リンパ節の病理像で悪性リンパ腫,その他のリンパ増殖性疾患を鑑別する.硝子血管型は胸腺腫も鑑別を要する.IgG4関連疾患【⇨10-20】の鑑別は病理学的には困難な場合があり,CDではIL-6が高値,IgG4が通常正常であることから診断できることがある.
治療・予後
 単発性CDは緩徐進行性,多発性CDは急速進行性のことが多いが,ともに消長を繰り返す場合もある.単発性CDは,巨大な場合であっても切除すると炎症症状は消失し腫大が再燃することは少ない.放射線療法も有用とされる.多発性CDに対する標準治療は確立していないが,コルチコステロイド,アルキル化薬が有用であることが多い.抗CD20モノクローナル抗体,抗IL-6モノクローナル抗体の有用性も報告されている.ただいずれの治療も休薬すると再燃することが多い.[塚崎邦弘]
■文献
Dispenzieri A, Pittaluga S, et al: Diagnosis and management of disorders that can mimic lymphoma. In: Non-Hodgkin Lymphoma, 2nd ed (Armitage JO, Mauch PM, et al eds), pp 557-585, Lippincott Williams & wilkins, Philadelphia, 2009.
正木康史,梅原久範:IgG4関連疾患-新たな疾患概念-.臨床血液,52: 315-321,2011.

Castleman病(血液疾患と腎障害)

(3)Castleman病
 発熱,貧血,急性期蛋白の増加,全身のリンパ節腫脹,肝脾腫,多クローン性高ガンマグロブリン血症などを特徴とするリンパ増殖性疾患である.約50%の症例に検尿異常が認められ,アミロイドーシス,メサンギウム増殖性腎炎,膜性増殖性糸球体腎炎や間質性腎炎を合併する.ステロイド治療により改善することが多い.インターロイキン(IL)-6の過剰産生が病態形成に関与しており, ヒト化抗IL-6受容体モノクローナル抗体(トシリズマブ)による治療も有効である.[前嶋明人・野島美久]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

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