CCS(二酸化炭素の回収・貯留技術)(読み)しーしーえす

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

CCS(二酸化炭素の回収・貯留技術)
しーしーえす

二酸化炭素(CO2)の回収貯留技術のこと。Carbon dioxide Capture and Storageの略。発電所や工場等から排出されるCO2分離・回収し、地層(海底地下層を含む)に貯留する技術の総称である。技術的には、大きく分けて、CO2の分離・回収、輸送、圧入・貯留の3段階からなる。分離方法には、化学吸着法、物理吸収法、膜分離法等、貯留方法には、地中隔離法、海洋隔離法等がある。

 CCSは、気候変動対策を強化し、CO2の大幅削減を実施しようとする場合、どうしても不可欠となる技術の一つ、とみられるようになっている。省エネルギーを推進し、再生可能エネルギーや原子力などの非化石エネルギー利用を拡大しても、どうしてもCO2排出をゼロにすることがむずかしい分野があり、その排出を処理するため、CCSに大きな期待が寄せられるようになっているからである。

 しかし、CCSには、きわめて高いコストがかかり、石油生産の際に、CO2を地中に圧入し、石油の粘性を低くして増産する石油増進回収Enhanced Oil Recovery(EOR)に使うことで、CCSの採算性を高めようとする取組みを除けば、CCS単独では採算がとれない、という問題がある。また、貯留したCO2がふたたび漏出しないか、安定的に貯留できるか、という技術的な課題もある。また、これらの課題への懸念があるため、社会的受容性を確保できるか、という問題もある。しかし、世界で脱炭素化への取組みが急速に加速するなか、CCS技術の必要性にかんがみ、CCSのコスト削減等の取組みが進められている。また、脱炭素化のための重要な手段としてCO2フリーの水素アンモニアへの期待も大きく高まっているが、化石燃料からCO2フリー燃料を製造する場合には、CCSが不可欠になる。この点でもCCSは重要な役割を果たすことが期待されている。

小山 堅 2022年1月21日]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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