BMW(ビーエムダブリュー)(読み)びーえむだぶりゅー(英語表記)BMW AG

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

BMW(ビーエムダブリュー)
びーえむだぶりゅー
BMW AG

ドイツ南部バイエルン州ミュンヘンに本拠を置く自動車メーカー。正式名称はバイエリッシェ・モトーレン・ベルケBayerische Motoren Werke AG(バイエルンのエンジン工場の意)。現地読みからベーエムベーともいう。

 1916年、航空機用エンジンメーカーとして設立された。1923年、オートバイの生産を開始。1928年、チューリンゲン州アイゼナハにあったディクシー・アウトモービル・べルケ社Dixi Automobil Werke AGを傘下に収め、同時にディクシー社が所有していたイギリスオースチン社のオースチン・セブンAustin Sevenの生産ライセンスを入手、最初の自動車「ディクシー」の生産を開始した。その後もオートバイや自動車、航空機用エンジンなどを生産する。1945年、第二次世界大戦により、工場は焼失し壊滅状態にあった。連合国は、BMWが第二次世界大戦中に航空機用エンジンやロケットを生産したことに対し3年間の業務停止処分をくだした。戦後しばらくは航空機、自動車、オートバイの生産は禁止されていたが、1947年に単気筒エンジンを積んだオートバイを完成させ、翌年から生産を開始、1951年には自動車の生産も始められた。順調に発展を続けた結果、1960年代後半には需要に追いつけなくなり、他社の工場を吸収するなど国内の生産拠点を拡大し、1973年にはヨーロッパで最初の子会社をフランスに設立、北アメリカでの生産も開始した。1990年、出資率50.5%で、ロールス・ロイス社との合弁会社BMWロールス・ロイス社BMW Rolls-Royce GmbHを設立、1965年以降生産を中止していた航空機用エンジンの生産を再開した。1990年代に入り世界の自動車業界が再編の動きを加速させるなか、BMWは1994年、イギリスのローバー・グループRover Group PLCを買収した。買収の決め手は、BMW車とローバー車が市場で競合しないこと、ローバーのブランド・イメージが高級車メーカーとしてのBMWのブランド・イメージを損なうものでないことなどであった。しかし、買収後のローバーの損失は大きく、1998年度の販売台数は前年度に比べマイナス6.4%と減少した。ローバーはその後も毎日3億円以上の赤字が出るといわれ、回復のめどはたたず、2000年3月に売却処分を決めた。大型レジャー用車「ランドローバー部門は約30億ドルでアメリカのフォードに売却、「ローバー」「MG」部門は元ローバー社長ジョン・タワーズ率いる投資グループ、フェニックスコンソーシアム交渉を進めていたが、同年5月に「象徴的金額」としてわずか10ポンド(約1700円)で売却契約を交わした。

 BMWの歴史は高性能エンジンの開発とともに発展を遂げてきた。その高い技術力に裏打ちされた高性能・高品質の車には定評があり、ダイムラー・クライスラー(現ダイムラー)とともにドイツを代表する高級車メーカーとして世界にその名を知られている。BMWは、その生産を高級車部門に特化(専門化)しているため大衆車量産メーカーに比べて市場での販売シェアは高くない。ドイツ国内での販売シェアは約6%程度で、この数値は1980年代以降ほぼ一貫している。しかしながら、これは「少数であっても確実な購買層に」というBMWの経営哲学に基づくものであり、こうした一貫した経営方針が過剰生産状態にあるといわれる自動車業界にあって、高収益を維持し続ける要因となっている。

 BMWの特色として、環境問題に対する取組みが注目される。自動車メーカーにとって環境問題は、21世紀に生き残るうえで欠くことのできない重要なテーマであるが、世界の自動車メーカーのなかでもっとも早くからこの問題に取り組んできた。1990年には当時社長であったフォン・クーハイムがデトロイトのオートショーで、自動車メーカーとして世界で初めて廃車のリサイクルに責任をもつことを宣言、1991年から実行している。また、1994年にはミュンヘン近郊のローホフにリサイクル解体研究センターを設立し、リサイクルしやすい車の設計に取り組むなど、その先進的な姿勢は高い評価を受けた。

 1998年にロールス・ロイスの商標権を得ていたが、ロールス・ロイス社とフォルクスワーゲン社との契約に組み込まれていたため2003年まで使用できなかった。また、ローバー売却の際には「ミニ」ブランドは保持している。2008年の売上高は531億9700万ユーロ、販売台数は143万5876台(うちミニ23万2425台、ロールス・ロイス1212台、オートバイ10万1685台)、従業員数10万0041人。

[所 伸之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

黄砂

中国のゴビ砂漠などの砂がジェット気流に乗って日本へ飛来したとみられる黄色の砂。西日本に多く,九州西岸では年間 10日ぐらい,東岸では2日ぐらい降る。大陸砂漠の砂嵐の盛んな春に多いが,まれに冬にも起る。...

黄砂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android