21cm放射(読み)にじゅういちセンチメートルほうしゃ

改訂新版 世界大百科事典 「21cm放射」の意味・わかりやすい解説

21cm放射 (にじゅういちセンチメートルほうしゃ)

1940年代にオランダの物理学者ファン・デ・フルストによって予言され,50年代になって実際に宇宙に発見された,波長21cmの放射。その後の観測によって,われわれの銀河回転などに新しい描像をもたらした。銀河内の中性水素は温度が100K程度と低いために,ほとんどが水素原子としてのもっともエネルギーの低い基底状態にある。基底状態で,電子と陽子との相互作用によるエネルギー差は,ちょうど波長21cm(周波数1420MHz)の電波に対応するようになる。したがって宇宙に基底状態の水素原子が多量に存在すれば,電波望遠鏡にかかるはずである。この期待された放射は,1950年初期に発見され,この放射の観測によって得られたわれわれの銀河系の新しい描像とともに,電波天文学初期の一時代を画した。天体物理学の中で,光の領域では,原子の発するスペクトルが研究の大部分を占めているが,波長21cmの電波のスペクトルが加わることで,星間ガスの研究が進んだ。
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