日本大百科全書(ニッポニカ) 「08/15」の意味・わかりやすい解説
08/15
ぜろはちいちご
Null-Acht Fünfzehn
ドイツの作家キルストの長編三部作で『兵営の08/15』『戦線の08/15』『終末の08/15』に分かれる。1954~55年発表。08/15とはナチス国防軍軽機関銃の機種名で、国防軍と戦争を象徴している。戦場は第二次世界大戦の東部戦線。兵士アッシュをめぐり、軍隊内の人間の醜悪さ、権力型人間のエゴイズムを浮き彫りにし、戦闘中に否応(いやおう)なく露呈する友情の危機を描く。権力に陶酔する盲従者、後方のカリスマ的存在者を俎上(そじょう)にのせ、さらに戦争のあらゆる局面で、「おお主よ」と抽象的人間愛を説く牧師の偽善性もえぐる。24か国で翻訳され、発行部数は250万部に及ぶ。
[古賀保夫]