鼻癤(読み)びせつ(英語表記)Furuncle of nose

六訂版 家庭医学大全科 「鼻癤」の解説

鼻癤
びせつ
Furuncle of nose
(鼻の病気)

どんな病気か

 鼻の穴の入口付近は鼻前庭(びぜんてい)と呼ばれる部位です。この部分は皮膚でおおわれ、汗腺(かんせん)皮脂腺(ひしせん)、鼻毛があります。これらの部位に細菌感染が生じ、うみがたまった状態です。

 爪による傷や鼻毛の抜毛により毛嚢(もうのう)皮脂腺に細菌が感染することで起こります。

症状の現れ方

 鼻前庭のはれ、痛み、発赤が現れます。触るとかなりの痛みが生じます。進行すると、うみが破れて出てくることもあります。

 炎症が高度になると鼻全体、さらには顔面まではれる顔面蜂窩織炎(がんめんほうかしきえん)を生じたりします。まれに細菌が静脈系から頭蓋(ずがい)内に入り、頭蓋内合併症を起こしたりすることもあります。

検査と診断

 鼻鏡で観察するとすぐに診断はつきます。鼻の穴を鼻鏡で広げた時にかなりの痛みがあります。

治療の方法

 抗生剤を内服したり、抗生剤が入った軟膏を塗布します。痛みがひどい場合は鎮痛薬も処方されます。うみがたまってきたのが明らかな場合は、切開する場合もあります。

病気に気づいたらどうする

 耳鼻咽喉科を受診し、適切な治療を受けましょう。鼻がはれたら、いじってはいけません。

飯野 ゆき子, 太田 康

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼻癤」の意味・わかりやすい解説

鼻癤
びせつ

固有鼻腔(びくう)の前庭部皮膚にある皮脂腺(せん)の急性化膿(かのう)性炎症で、ブドウ球菌の感染によっておこる。炎症が皮下組織に及ぶと強烈な痛みがあり、硬い硬結(しこり)が鼻前庭に現れる。一般には、鼻の先端部に多くみられ、腫脹(しゅちょう)はしだいに軟らかく赤くなる。通常5日以内に自潰(じかい)排膿して自然に治癒する。治療としては、局所を清潔にして抗生物質を全身的に投与する。ときに頭蓋(とうがい)内合併症として、海綿静脈洞炎や敗血症をおこすことがある。

[河村正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android