精選版 日本国語大辞典 「鼠」の意味・読み・例文・類語
ねずみ【鼠】
〘名〙
① ネズミ科に属する哺乳類の総称。体長五~三五センチメートル。尾は細長く、角質のうろこでおおわれて毛はほとんどないものが多い。体毛は灰色、黒褐色など。上下のあごに各一対の大きな門歯があり、物をかじるのに適する。繁殖力は強く年に数回子を産む。種類は多く、人家にすむドブネズミ・クマネズミなどの家ネズミと、野外にすむハタネズミ・アカネズミなどの野ネズミとに分けられる。愛玩用や医学の実験用となる種もあり、また一部の種は農作物・食料品・樹木などを食い荒らしたり、病原菌を媒介する害獣として扱われる。
※古事記(712)上(兼永本訓)「是に出でむ所を知らざる間(あひた)に、鼠(ネスミ)来て云はく」
※能因本枕(10C終)二五「ねすみの走りありく、いとにくし」
② 「ねずみいろ(鼠色)」の略。
※仮名草子・都風俗鑑(1681)二「さて帯は大方無地にして、嶋繻子、黒じゅす、鼠(ネズミ)、すす竹」
③ ひそかに害をなす賊徒。また、君主の側近の悪人。
※雑俳・裏若葉(1732)「熊坂が死んでも国に鼠有り」
④ 「ねずみきど(鼠木戸)」の略。
※雑俳・柳多留‐一〇八(1829)「鼠から化して鶉の桟敷番」
⑤ 「ねずみはなび(鼠花火)」の略。
※雑俳・川傍柳(1780‐83)三「立ち消へがしたに鼠をすてて逃げ」
⑥ 「ねずみはんぎり(鼠半切)」の略。
※雑俳・柳多留‐五九(1812)「勝負附鼠に羽根が生えて飛」
⑦ 労働運動で、裏切り者をいう。〔いろは引現代語大辞典(1931)〕
ねず【鼠】
〘名〙
① 「ねずみ(鼠)」の略。
※名語記(1275)四「ねずみのみをいはずして、ねずとばかりいへり、ねずなき、ねずばしり等、如何。答、わざとみをいはざるには非ず。ねずみといふが、自然にいひかくさるる也。又、ねすむといへる、むは、みと堅通せる同字なれば也」
② =ねずみいろ(鼠色)
※鳥影(1908)〈石川啄木〉一「幅広の鼠(ネズ)のリボンを生温かい風邪が煽る」
ね【鼠】
〘名〙 =ねずみ(鼠)
※西大寺本金光明最勝王経平安初期点(830頃)一「鼠(ネ)い此の梯に縁りて上りて阿蘇羅の能く空の中の月を障ふるを除去せむときに」
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