(読み)すっぽん

精選版 日本国語大辞典 「鼈」の意味・読み・例文・類語

すっぽん【鼈】

〘名〙
カメスッポン科の淡水産カメの総称ユーラシア・アフリカ・北米等に二二種がいる。日本にはスッポン(ニホンスッポン)一種がおり、ふつうこれをさす場合が多い。ニホンスッポンは全長約三〇センチメートル。背甲はオリーブ色で、ほぼ円形。背甲に甲板はなく、中央部は少し隆起して堅いが、他はいぼ状突起のある皮膚でおおわれ、柔らかい。首は長く、口吻(こうふん)は細長くとがる。手足にみずかきをもち、それぞれに三本の爪がある。浅い水底にひそみ、魚、カエル、カニなどに激しくかみついて捕える。本州以南の河川・池沼に分布する。養殖は盛んに行なわれている。肉は美味で栄養に富み、血液は強壮剤など薬用にされる。どろがめ。かわかめ。すぽん。
※俳諧・談林十百韻(1675)上「さかまく水に死骸たづぬる〈志計〉 すっぽんは波間かき分失にけり〈雪柴〉」
② 酒を入れる容器。ひさご。瓢箪
浄瑠璃・一谷嫩軍記(1751)二「腰のすっぽんから、有あふ茶碗へどぶどぶどぶ」
③ 歌舞伎劇場で本花道の七三に切り抜いてある方形の穴。奈落(ならく)から花道へ役者をせり上がらせるためのもの。せり穴。
※賀久屋寿々免(1845)一「花道 せり上 すっほん此所より役者狂言によって出る事」
和船の淦(あか)を排水する木製の吸上げポンプ。小船用は水鉄砲式の一人用だが、大船では井戸のポンプと同じく長い柄を設けて数人で押すものを使う。近世の和船では必ず用意したが、ふつうこれを淦間(あかま)へ立て、その排水口から舷外へ居(います)と呼ぶ樋をかけて排水した。淦引(あかびき)淦取(あかとり)。〔船皆具之名并遣方(17C末)〕
山陽地方で、水田に水を引き上げるのに用いる器具。〔成形図説(1804‐06)〕
⑥ 男根をいう語。
※雑俳・伊勢冠付(1772‐1817)「臍の下の開帳・すっぽん入れる放生会

べつ【鼈】

〘名〙 スッポンのこと。
※洒落本・虚実柳巷方言(1794)中「漢語〈略〉鼈(ベツ) すっぽん」

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デジタル大辞泉 「鼈」の意味・読み・例文・類語

すっぽん【×鼈】

カメ目スッポン科の爬虫はちゅう類。淡水産のカメで甲長約35センチ。甲はほぼ円形で軟らかく、暗青灰色。くびが長く、ふん部は管状。あごの力が強く、よくかみつく。北海道を除く日本各地、朝鮮半島、中国、インドシナ北部の河川にすむ。食用。民間で薬用にする。かわがめ。どろがめ。まる。
歌舞伎劇場で、本花道七三しちさんにある方形の切り穴。床板が上下し、多くは妖怪変化などにふんした役者の出入りに使用される。
和船の船底の水をくみ取るためのポンプ。
[類語]海亀玳瑁たいまい石亀緑亀噛付亀象亀

べつ【×鼈】

スッポンのこと。

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動植物名よみかた辞典 普及版 「鼈」の解説

鼈 (スッポン)

動物。スッポン科に属するカメの総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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