黒色表皮腫(読み)こくしょくひょうひしゅ(英語表記)Acanthosis nigricans

六訂版 家庭医学大全科 「黒色表皮腫」の解説

黒色表皮腫
こくしょくひょうひしゅ
Acanthosis nigricans
(皮膚の病気)

どんな病気か

 皮膚が黒く、ごわごわしてくる角化症(かくかしょう)(皮膚の最表層の部分が厚くなる病気)です。良性型、悪性型、仮性型の黒色表皮腫に大別されます。

原因は何か

 良性型は内分泌障害・先天異常、悪性型は内臓悪性腫瘍、仮性型は肥満に伴って生じます。高齢者では悪性型が多くみられます。

 良性型や仮性型は、インスリン抵抗性が基礎にあるために生じると考えられています。インスリン抵抗性とは、血糖値に比べて、血中のインスリンというホルモンが不適当に高い状態です。

 このような状態では、血中インスリンが、皮膚の細胞のインスリン(よう)増殖物質レセプター(受容体)に結合して、皮膚の細胞が増殖し、黒色表皮腫になると考えられています。

症状の現れ方

 乳房下部、腋窩(えきか)(わき)の下)、項部(こうぶ)うなじ)、頸部(けいぶ)(くび)、肘窩(ちゅうか)(腕の関節の屈曲部)、膝窩(しっか)(ひざ)関節の後面)、肛囲(肛門の周囲)などに皮膚の色素沈着(黒褐色のことが多い)、角質の増殖が現れます(図16)。

 全身の皮膚に、びまん性に褐色~黒褐色の色素沈着がみられることもあります。毛髪が薄くなったり、毛が抜けやすくなることもあります。

 悪性型黒色表皮腫に合併する悪性腫瘍の大部分(せん)がんであり、なかでも胃がんが多くみられます。この場合には皮疹(ひしん)が先行する場合と、同時に発生する場合の両方があります。

 高齢者にこの病気が生じた場合には、悪性腫瘍の有無を検索する必要があります。

検査と診断

 病理組織学的検査(皮膚を採取して顕微鏡で観察する検査)と血液学的検査を行います。血液学的検査では空腹時血糖、血中インスリン濃度を測定したり、耐糖能(たいとうのう)検査(上昇した血糖値を正常にもどす能力を調べる)を行います。

 高齢者の場合は悪性腫瘍の有無を検索します。

治療の方法

①5%サリチル酸ワセリンを1日2~3回患部に塗ります。

②ビタミンA軟膏を1日数回患部に塗ります。

尿素(にょうそ)軟膏を1日数回患部に塗ります。

病気に気づいたらどうする

 まず、皮膚科専門医を受診して正しい診断をしてもらいます。必要があれば皮膚科専門医から糖尿病専門医を紹介してもらい、インスリン抵抗性の治療を受けるとよいでしょう。

関連項目

 糖尿病肥満症胃がん

米田 耕造


出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「黒色表皮腫」の意味・わかりやすい解説

黒色表皮腫
こくしょくひょうひしゅ
acanthosis nigricans

黒色棘細胞増殖症ともいう。項頸部腋窩,乳頭,臍窩鼠径部などに黒褐色の乳頭状皮疹が対側性に多発して融合する。手指足趾,口腔粘膜にも生じることがある。良性型と悪性型とに大別される。良性型は先天性素因により小児期に生じるものもあるが,大部分は若年の肥満者に現れ,やせるとともに軽快,消失する。悪性型は中高年者に生じ,ほぼ全例に内臓の悪性腫瘍,特に胃癌併発が認められる。

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世界大百科事典(旧版)内の黒色表皮腫の言及

【角化症】より

…優性遺伝。(9)黒色表皮腫 腋窩(えきか)等,おもに皮膚のすれる部分が黒くなり,表面乳頭腫を示すもの。優性遺伝のほか,内臓の悪性腫瘍に伴うものがある。…

※「黒色表皮腫」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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