黒石寺(読み)コクセキジ

デジタル大辞泉 「黒石寺」の意味・読み・例文・類語

こくせき‐じ【黒石寺】

岩手県奥州市水沢区黒石町にある天台宗の寺。山号は妙見山。天平元年(729)行基の開創と伝える。江戸時代は仙台藩主伊達氏の祈願所。くろいしでら。

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日本歴史地名大系 「黒石寺」の解説

黒石寺
こくせきじ

[現在地名]水沢市黒石町

山内やまうち川沿いの山峡の集落山内の丘陵に南面して建ち、くろいしでらともよぶ。妙見山と号し、本尊薬師如来(貞観仏、国指定重要文化財)。天台宗で、江戸時代には上野寛永寺末。寺伝や「黒石村安永風土記」によると、天平元年(七二九)行基が薬師堂を建立、翌年その傍らに一寺を建立して東光山薬師寺と号した。延暦年間(七八二―八〇六)の初め兵火で焼亡したが、大同二年(八〇七)坂上田村麻呂が名刹の焼失をなげき、飛騨の工匠を招いて薬師堂を再建。嘉祥二年(八四九)慈覚大師があまたの伽藍を造営、四天王・十二神将を刻み本堂に安置したという。また堂背の大師森(慈覚大師が坐禅した岩山)に妙見祠があったので山号を妙見山とし、岩山が黒石(蛇紋石)であったので寺号を黒石寺と改め、薬師如来が本尊であるので別に薬樹王やくじゆおう院と号し、その徒弟将意(のちの藤波氏の祖)を住持とした。盛時には釈迦堂・尼寺・金峯堂・蔵王堂・妙見堂・常念仏堂など四八の堂塔伽藍が立並んでいたという。

本尊の薬師如来は木造坐像(像高一二四センチ)で、基本部は桂の一木で刻まれている。胎内に貞観四年(八六二)一二月の墨書銘があり、在銘木彫仏像ではわが国最古のものである。また造立にあたっての施主名として額田部・保積部・宇治部・物部の四姓が記されており、これが当地一帯に在住していた人々であったとすれば、延暦二一年の胆沢いさわ城築造から半世紀余りで、当地に仏教が定着するだけの素地が形成されていたことになる。この如来像は平安前期の像にふさわしい、いかめしく堂々たる姿で、地方の作風がわかる標準作例としても価値が高い。現在金箔はほとんどはげ落ち、胸と顔の一部に残っているにすぎないが、粒の大きい螺髪の多くも当初のものである。

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百科事典マイペディア 「黒石寺」の意味・わかりやすい解説

黒石寺【こくせきじ】

岩手県奥州市水沢区にある天台宗の寺。〈くろいしでら〉とも。行基(ぎょうき)建立の薬師堂を,坂上田村麻呂(さかのうえのたむらまろ)が再建,円仁(えんにん)が多くの伽藍を造営したという。胆沢(いさわ)城跡の真南約10kmに位置し,同城とのつながりが推定されている。貞観(じょうがん)4年(862年)の胎内墨書銘がある本尊の木造薬師如来座像,木造僧形座像(伝慈覚(じかく)大師像)は重要文化財。旧暦1月7日夜から翌暁にかけて行われる蘇民(そみん)祭は奇祭として知られる。
→関連項目蝦夷地水沢[市]

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改訂新版 世界大百科事典 「黒石寺」の意味・わかりやすい解説

黒石寺 (こくせきじ)

岩手県奥州市水沢区黒石町にある天台宗の寺。〈くろいしでら〉ともいう。山号は妙見山。729年(天平1)行基の開基と伝えられ,慈覚大師を中興の祖とする。本尊薬師如来は862年(貞観4)の胎内銘をもつ重要文化財で,造られた時代と風土を反映した厳しい姿をもって知られる。旧暦1月7日夜から翌暁にかけて行われる蘇民祭は,厳寒中の裸の夜祭で,修験の性格をもった寺のなごりを残す。薬師信仰に基づいて厄災消除と五穀豊穣を祈願するものである。
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デジタル大辞泉プラス 「黒石寺」の解説

黒石寺

岩手県奥州市にある寺院。「こくせきじ」「くろいしでら」と読む。天台宗。本尊は薬師如来。729年、東光山薬師寺として行基が開山したと伝わる。その後、蝦夷征伐の戦火により焼失。849年に復興し、妙見山黒石寺と改称。旧正月7日夜から8日早朝にかけて行われる蘇民祭は国の無形民俗文化財

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世界大百科事典(旧版)内の黒石寺の言及

【黒石寺】より

…岩手県水沢市にある天台宗の寺。〈くろいしでら〉ともいう。山号は妙見山。729年(天平1)行基の開基と伝えられ,慈覚大師を中興の祖とする。本尊薬師如来は862年(貞観4)の胎内銘をもつ重要文化財で,造られた時代と風土を反映した厳しい姿をもって知られる。旧暦1月7日夜から翌暁にかけて行われる蘇民祭は,厳寒中の裸の夜祭で,修験の性格をもった寺のなごりを残す。薬師信仰に基づいて厄災消除と五穀豊穣を祈願するものである。…

※「黒石寺」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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