黄
き
黄色に対応する光の波長は、ほぼ573~578ナノメートルである。黄は、一般的に光刺激が同じであると、他の色に比べてかなり明るく感じる。これは人間の目が、黄の波長付近に対して敏感であることによっている。黄は光の三原色ではないが、色料の混色(減法混色)の場合には原色の一つに入っている。また、黄という文字は「光」と「田」の含意文字で、田の色のことと書かれている。したがって、ある意味では身近な色といえよう。
黄は一般的に、はでな、暖かい、明るい、強い、陽気な、はっきり、やや興奮した、といった印象がもたれている。連想としては、色そのものから思い浮かべられるレモン、ヒマワリ、カナリヤ、ミカン、バナナ、タンポポなどがあげられる。また、黄が象徴するものとしては、明朗、快活、活動、注意などがあげられる。このようなことから、黄が象徴するイメージとしては、柔らかい、明るい、楽しい、幸福な、陽気な、肌ざわりがよい、といったことになるであろう。これは、赤などと同様に外に発散するというイメージであるが、オレンジ色などに比べるとその度合いがやや弱く、柔らかみが増すようである。
黄に対する好みは、成人の場合にはそう高くない。しかし、子供のときには比較的高いといわれており、年齢が進むにつれ、好みが減少する傾向がみられる。
人間の目は、同じ光の強さのもとでは、黄を他の色より敏感に感じるため、一般に明るく感じられる。したがって、暗い色と組み合わせることにより、その対比効果で遠くからよく見える。これを利用して、黄と黒の組合せが、遠くからよく見えることが必要とされるものに使われることが多い。たとえば踏切の標識などはこの例であるし、安全地帯や道路工事の作業服などに用いられることも多い。
[相馬一郎]
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デジタル大辞泉
「黄」の意味・読み・例文・類語
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き【黄】
〘名〙 (形動)
① 七色、五色、また、三原色の一つ。黄金、山吹の花、卵の黄身などのような色。また、そのような色のさま。きいろ。上代では赤と通用されることが多い。
※書紀(720)天智九年六月(寛文版訓)「邑(むら)の中に亀(かはかめ)を獲(ゑ)たり。背に申(しん)の字(な)を書(しる)せり。上(うへ)黄(キ)に下(した)玄(くろ)し」
※源氏(1001‐14頃)夕顔「きなる生絹(すずし)の単袴(ひとへばかま)」
② 声の高くするどいこと。また、そのさま。〔日本一鑑窮河話海(1565‐66頃)〕
こう クヮウ【黄】
〘名〙
① きいろ。き。おう。〔色葉字類抄(1177‐81)〕〔易経‐坤卦〕
② 令制で、三歳以下の称。〔令義解(718)〕〔新唐書‐
食貨志〕
きい【黄】
〘名〙 (形動)(「き(黄)」の変化した語) 黄色。また、その物や、そのさま。
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き【黄】
色名の一つ。日本工業規格(JIS)では有彩色(10色名),無彩色(5色名)の計15色名を基本色名に定めているが,黄は有彩色の基本色名の一つである。スペクトル色(可視光線の単色光の示す色刺激)は,人によって色感覚が異なり,その波長も一定していないが,黄は波長ほぼ570~575nmの範囲にある。
[象徴としての黄]
黄が土の色であることはとくに中国で古来意識されたらしく,《説文》にも黄は土の色であるという。
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世界大百科事典内の黄の言及
【色】より
…私たちは物を見るときその形を知覚するが,黄だとか青だとか,あるいは赤だとかの色も同時に知覚する。このように色とは私たちの目が光に対して感ずる知覚の一つであると表現することができよう。…
【緑】より
…スペクトル色(可視光線の単色光の示す色刺激)は,人によって色感覚も異なり,その波長も一定でないが,緑は波長ほぼ480~510nmの範囲にある。
[象徴としての緑]
緑は青と黄とを重ねた色であるが,その概念は古今東西はなはだあいまいで,青から黄にいたるさまざまの色を含み,しばしば青および黄とも混同される。それは,自然界において緑色を呈するものが主として草木の葉であり,それが青から黄にいたるさまざまの色を示すからであろう。…
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