黄蘗・黄膚(読み)きはだ

精選版 日本国語大辞典 「黄蘗・黄膚」の意味・読み・例文・類語

き‐はだ【黄蘗・黄膚】

〘名〙 (「蘗」は「肌・皮」の意。「きわだ」とも)
① ミカン科の落葉高木。各地の山地に生える。高さ約一五メートル。樹皮はコルク質で縦に深く裂け、淡黄灰褐色、内部は鮮黄色。葉は対生し、五~一三枚の小葉からなる奇数羽状複葉。小葉は長さ約一〇センチメートルの卵状楕円形で先はとがり、縁に細かい鋸歯(きょし)がある。雌雄異株。初夏、枝先に円錐花序を出し、黄緑色の小さな花をつける。果実は径約一センチメートルの球形で黒熟する。樹皮は漢方で黄柏(おうばく)といわれ、健胃薬とされるほか、黄色染料や屋根板などに利用される。材は建築材、器具材などとなる。漢名、黄蘗。おうばく。〔出雲風土記(733)〕
※増鏡(1368‐76頃)八「紙をひたして見せらるるに、いみじう濃く出でたるきわたの色なり」
※能因本枕(10C終)七二「黒と白と。思ふとにくむと。あゐときわたと。雨と霧と」
[語誌](1)①の木の内皮が黄色であることからキハダといい、中世以降はキワダと発音するようになる。
(2)黄色染料とするときは、砕いた内皮を煎じて灰汁で媒染する。その煎汁には防虫効果があり、古くは写経や戸籍帳などにこの汁で染めた紙を用いた。現在も「正倉院文書」などに残る。

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