黄紙(読み)きがみ

精選版 日本国語大辞典 「黄紙」の意味・読み・例文・類語

き‐がみ【黄紙】

〘名〙
黄色の紙。また、そめて黄色にした紙。
言継卿記‐大永七年(1527)二月一六日「予大集経の十と十八と二巻〈略〉くはられ候了、予筆立仕候了黄紙上下計堺をかけ候。すき堺にて書之、六行堺」
江戸時代の訴訟文書の一つ。奉行所老中罪人刑罰につき指示を仰ぐ時、吟味伺書(ぎんみうかがいしょ)に添付して提出した黄色い紙片御定書百箇条を引用して、三奉行が適当と考えた刑罰が記されている。
※禁令考‐後集・第四・巻三七・延享二年(1745)九月「此以後之御仕置付は、向々より伺出候黄紙之文言を相認」

こう‐し クヮウ‥【黄紙】

〘名〙 黄蘗(きはだ)で染めた黄色い紙。黄蘗は紙を虫の害から防ぐために使い、永く保存を要する経文天子勅命などを書く料紙に用いた。黄麻紙黄麻おうし
西大寺資財流記帳‐宝亀一一年(780)「黄紙、綺緒、花軸

おう‐し ワウ‥【黄紙】

〘名〙 黄蘗(きはだ)で染めた黄色い紙。詔勅や経文を書く料紙とした。こうし。
※高野本平家(13C前)二「座主、彼箱をあけて見給ふに、黄紙(ワウシ)にかけるふみ一巻あり」

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デジタル大辞泉 「黄紙」の意味・読み・例文・類語

おう‐し〔ワウ‐〕【黄紙】

黄麻紙おうまし2

き‐がみ【黄紙】

江戸時代、奉行などが上司に差し出す伺い書に添付した黄色の紙片。

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改訂新版 世界大百科事典 「黄紙」の意味・わかりやすい解説

黄紙 (こうし)

〈おうし〉とも読む。キハダ(黄蘗(おうばく))で染めた黄色い紙で,中国の六朝時代から虫害を防ぐために,おもに経典の用紙とされた。キハダは樹皮に苦味成分としてアルカロイドのベルベリンを多量に含み,これが黄色の色素であるとともに防虫効果をもつ。日本でも奈良時代には,写経所を中心に黄紙が大量に染められた。写経のほか詔勅など長く保存される文書に用いられ,伊勢の斎宮(いつきのみや)の忌詞(いみことば)で経典のことを〈染紙(そめがみ)〉というのも,経典が黄紙に書写されるのが多かったためであるという。経典に黄紙を用いる習慣は江戸時代まで行われた。
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普及版 字通 「黄紙」の読み・字形・画数・意味

【黄紙】こう(くわう)し

黄色い紙。詔書に用いる。唐・皎然〔従軍行、五首、五〕詩 紙、君王の詔 泥、尉の書

字通「黄」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の黄紙の言及

【黄紙】より

…キハダは樹皮に苦味成分としてアルカロイドのベルベリンを多量に含み,これが黄色の色素であるとともに防虫効果をもつ。日本でも奈良時代には,写経所を中心に黄紙が大量に染められた。写経のほか詔勅など長く保存される文書に用いられ,伊勢の斎宮(いつきのみや)の忌詞(いみことば)で経典のことを〈染紙(そめがみ)〉というのも,経典が黄紙に書写されるのが多かったためであるという。…

【紙】より

…こうした紙の流行にもかかわらず,晋の時代にはまだ簡牘(かんとく)の使用が続いた。東晋末に安帝を廃して楚国を建てた桓玄(かんげん)は,公式の文書に簡牘を使用することをやめ,〈黄紙〉を採用することを命令した。黄紙は虫害を避けるため,紙の黄蘗(キハダ)で染めたものである。…

※「黄紙」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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