翻訳|yellow fever
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
アフリカおよび南アメリカの熱帯ないし亜熱帯地域に流行するウイルス感染症で、黒吐病ともよばれる。病原体の黄熱ウイルスはネッタイシマカによって媒介され、感染経路として患者、サルおよび野生動物からカを介して感染する。臨床的には肝炎を主徴とする急性熱性疾患である。潜伏期は3~6日で、不顕性感染から軽症および重症型まである。軽症型では発熱、悪心、嘔吐(おうと)、徐脈がみられるが、数日で治癒する。重症型の場合は突然の高熱と著明な下肢痛で発症し、出血傾向に伴う吐血が認められる。発病3日目には一度症状が消え、解熱、徐脈をみたあとに第2期の中毒期に入る。この時期にはふたたび発熱がみられ、徐脈、血圧低下とともに黄疸(おうだん)が出現する。発病後10日目ごろには昏睡(こんすい)状態となる。重症型の予後は不良で、発病後6~10日で死亡するが、発病後7、8日目に解熱すれば予後はよくなる。特効薬はなく、対症療法として十分な補液(水分補給)が必要である。予防として流行地ではカの駆除を行うほか、これら流行地への旅行の際には黄熱ワクチンの接種が必要である。かつて黄熱は検疫法により検疫感染症(検疫伝染病)に指定されていたが、2005年に改正された世界保健規則に基づき対応が要請されなくなったことから、2006年(平成18)に検疫法が改正され、翌07年6月に検疫感染症から除外された。感染症予防・医療法(感染症法)で4類感染症に分類されている。なお、野口英世(ひでよ)が本病の研究で罹患(りかん)し倒れたことは有名である。
[松本慶蔵・山本真志]
フラビウイルス科フラビウイルスFlavivirus属に属するが、従来の分類ではアルボウイルスB群の1種とされていた。RNA(リボ核酸)1本鎖ウイルスで、直径40~50ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)、カプソメア(カプシドの構造単位)数32、エンベロープ(外被)がある。エーテル、デオキシコール酸に感受性を示し、血液中で4℃の温度条件下で1か月間感受性を持続、零下70℃で数年間保存できる。サル、モルモットにも病原性を示し、神経系、循環器、内臓に親和性を示す。ワクチン用の株はマウス脳に継代培養し、弱毒化したものが使われる。
[曽根田正己]
『フランソワ・ドラポルト著、池田和彦訳『黄熱の歴史 熱帯医学の誕生』(1993・みすず書房)』▽『小村剛史著『医聖 野口英世』(2000・健友館)』
ウイルス性出血熱の一種で,検疫伝染病に指定されている。アルボウイルスの一種が病原体である。中央アフリカ,中南米にみられる。都市型と森林型の2型があり,都市型はヒト→ネッタイシマカ→ヒトの経路で,カの刺咬により感染する。森林型は,多雨森林地帯で,カがおもにサルの間の伝搬を媒介し,ヒトは二次的にこれらから感染する。潜伏期は3~6日で,頭痛,嘔吐,めまいなどの症状で発病し,発熱,徐脈,眼球充血,出血傾向を示し,軽症ではしだいに熱が下がるが,重症の際は,出血傾向,タンパク尿,乏尿,無尿,せん妄,黄疸を呈し,血圧が下降して,6~7日で死に至る。白血球減少,血小板減少,凝固不全,肝機能障害をきたし,DIC(血管内凝固症候群)を起こしやすい。診断は,その人の行動歴と臨床症状から判断するが,早期に血液からのウイルス分離を試みる。血清反応も行われる。病後,終生免疫を得る。治療は対症療法である。致死率5~10%という。不顕性感染も多い。流行地へ入る者は予防接種を受けることにより,発病を阻止することができる。
この病気は18世紀以降,新大陸では何度も流行し,とくに1793年のフィラデルフィアの大流行は有名で,町の人口の1割が失われたという。その後1900年,アメリカのリードWalter Reed(1851-1902)により,人体実験によって,カによって伝搬されること,ウイルス病であることが明らかにされた。なお,黄熱病の研究のためにアフリカに赴いた野口英世がこの病気で倒れ,没したことは有名である。
執筆者:深谷 一太
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
黄熱はフラビウイルス属の黄熱ウイルスによる感染症で、サハラ以南のアフリカ諸国、中南米で流行しています。黄熱の流行地を図6に示します。黄熱ウイルスの宿主はヒトとサルで、ヒトはウイルスに感染しているネッタイシマカに刺されて感染し、黄熱を発症します。
潜伏期間は3~6日で、突然の発熱、頭痛、背部痛、
黄熱ワクチンの接種歴、海外渡航歴、生活様式が診断の参考になります。黄熱ウイルスに対する特異的な抗体価の測定、ウイルス抗原の検出(急性期血液からのウイルス分離など)により診断します。
特異的治療法はなく、対症療法が主体です。黄熱ワクチンで予防が可能であり、流行地に赴く場合にはワクチンを接種すべきです。
西條 政幸
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(2014-5-22)
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