黄土(おうど)(読み)おうど

日本大百科全書(ニッポニカ) 「黄土(おうど)」の意味・わかりやすい解説

黄土(おうど)
おうど

中国大陸北部、ヨーロッパ中部~東部、北アフリカ、北アメリカ中部、ニュージーランド南島などに広く分布する風成堆積物(たいせきぶつ)の呼称黄土(こうど)またはレスloessともいう。淡黄色または灰黄色のシルト質(砂粒と粘土粒子との中間の粒径をもつ粒子が主成分)で固結度の低い地層をなし、中国のものは黄土とよばれ、黄河(こうが)の流域に深く急峻(きゅうしゅん)な谷壁をなして露出している。レスの物質は多孔質で、河岸の乾いた壁面には垂直方向の割れ目が生じ、崩壊をおこしやすい。層中を浸透する水の沈積作用で、炭酸塩のレスキンダーLoesskinder(ドイツ語)とよばれる細長い固結物ができる。中国の場合はアジア内陸のモンゴル、タクリマカンなどの砂漠から、ヨーロッパや北アメリカなどでは約260万年前以降の第四紀の氷河時代に広がっていた大陸氷河周辺の氷成堆積物から、偏西風の風下側に飛来した微細な砂粒(すなわちシルト)が黄土の根源である。

 風成堆積物としての黄土の分布範囲はきわめて広い。日本北九州から山陰地方には、砂丘の層の間に、中国大陸からと推定される黄土(レス)の混入している部分が発見されており、現在も微量ではあるが飛来することがある。

[浅海重夫・渡邊眞紀子]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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