精選版 日本国語大辞典 「鶯」の意味・読み・例文・類語
うぐいす うぐひす【鶯】
[1] 〘名〙
① スズメ目ウグイス科の鳥。雄は全長約一六センチメートル、雌は約一四センチメートル。雌雄とも背面は褐色を帯びた緑色で、腹部は白っぽい。早春、「ホーホケキョ」と美声でさえずるので、飼い鳥とされる。夏は平地から高山までの各地の笹やぶにすみ、地鳴き(笹鳴きともいう)は「チャッチャッ」と鳴く。冬に山地のものは平地に降りてくる。鶯の卵はホトトギスの卵とよく似ているので、鶯はしばしばホトトギスの卵を孵化(ふか)して育てる。はるどり。はるつげどり。うたよみどり。きょうよみどり。においどり。ひとくどり。ももちどり。はなみどり。あたごどり。《季・春》
※万葉(8C後)五・八二四「梅の花散らまく惜しみわが園の竹の林に于具比須(ウグヒス)鳴くも」
※平家(13C前)四「梢の花色おとろえて、宮の鶯声老いたり」
② 「うぐいすかぐら(鶯神楽)」の略。
③ 「うぐいすいろ(鶯色)」の略。
④ 「うぐいすちゃ(鶯茶)」の略。
⑤ 「うぐいすもち(鶯餠)」の略。
※雑俳・柳多留‐三二(1805)「うくひすやうづらでものむたかのつめ」
⑥ 帯などをくける時に用いるもの。竹篦(へら)の端を割ったもの。
⑦ 香道具の一つ。香の包み紙を止める金属製の串(くし)。鶯串。
⑧ 茶道具の一つ。茶箱の月の点前(てまえ)のとき、茶筅(ちゃせん)を立てるために使う金具。器据えの板に差し、それに茶筅の柄(え)を差す。
⑨ 草子などを綴じる竹串。
※俳諧・鷹筑波(1638)一「鶯で歌書をやとづるいと柳〈定時〉」
⑩ (①と形が似ているところから) 切匙(せっかい)をいう女房詞。〔女重宝記(元祿五年)(1692)〕
⑪ (①が「ホーホケキョ」と鳴くところから) 法華宗の僧をさしていう。
⑫ (①の鳴き声が美しいところから) 美声。また、美声の人をいう。
[語誌](1)「春告げ鳥」の異名のとおり、春を待って、あるいは春の到来を告げて鳴く鳥と捉えられるのが普通だが、「古今集」には、落花や行く春を惜しんで鳴く晩春の鶯も見られる。春が過ぎても鳴く鶯を「老鶯」といい、夏の季語となる。
(2)和歌では、特に早春の花である梅と組み合わせられる例が多く、「梅の枝の鶯」「梅に鶯」という構図は、絵画工芸の題材ともなる。
(3)「谷の鶯」は、もと中国の唐代に幽谷を出る鶯が早春詩の題材となっていたものを受容したもの。「谷深み春の光のおそければ雪につつめる鶯の声〈菅原道真〉」〔新古今‐雑上・一四四〇〕のように、世にいれられず沈淪する不遇や籠居の隠喩となり、逆に谷を出る鶯は出世や昇進を意味するようになる。
(2)和歌では、特に早春の花である梅と組み合わせられる例が多く、「梅の枝の鶯」「梅に鶯」という構図は、絵画工芸の題材ともなる。
(3)「谷の鶯」は、もと中国の唐代に幽谷を出る鶯が早春詩の題材となっていたものを受容したもの。「谷深み春の光のおそければ雪につつめる鶯の声〈菅原道真〉」〔新古今‐雑上・一四四〇〕のように、世にいれられず沈淪する不遇や籠居の隠喩となり、逆に谷を出る鶯は出世や昇進を意味するようになる。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報