精選版 日本国語大辞典 「鳥海山」の意味・読み・例文・類語
ちょうかい‐さん テウカイ‥【鳥海山】
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鳥海火山帯の主峰で、秋田・山形の県境にまたがるが、山頂部分は山形県に属する。
二つの円錐状成層火山からなり、一つは
暦応五年(一三四二)七月二六日の日付のある山形県
「続日本後紀」承和五年(八三八)五月一一日条に「奉授出羽国従五位上勲五等大物忌神正五位下」とあり、鳥海山の大物忌神は正五位下の神階を授けられた。同七年七月二六日条では、従四位下の神階と、封戸二戸が寄進された。その理由を述べた宣命に、
とある。「石兵零利止申」とは、前年の承和六年に田川郡西浜(現山形県)の砂地に隕石が多数落下したことをうけるもので、それと遣唐使が南海で賊を破ったこととの結付きは不自然だが、この時期、なお蝦夷の不穏な動向を前に、辺境の神として大物忌神の神威に注目したものであろうか。
山形・秋田県境に位置する火山で、標高は二二三七メートル、山頂は山形県域にある。二つの円錐状成層火山から構成され、
古くは
現在山頂には大物忌神社本殿が置かれ、山麓の
出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報
秋田・山形県境に位置する山。日本海岸にまですそ野が広がる秀麗な成層火山で,出羽富士,秋田富士とも呼ばれる。最高峰の新(しん)山(2236m)を中央火口丘として七高(しちこう)山,伏拝(ふしおがみ)岳などの外輪山がこれをかこむ東鳥海火山と,火口湖の鳥ノ海を中心とする西鳥海火山の二つの火山体からなる。新山は1801年(享和1)に噴火して形成されたので,享和岳とも呼ばれている。1974年には1821年(文政4)以来153年ぶりに小噴火がみられた。西鳥海火山は笙ヶ岳(しようがたけ),月山森(がつさんもり)などの外輪山にかこまれて,鍋森(1652m)や扇子森の中央火口丘と,直径約200mの鳥ノ海火口湖がある。東鳥海火山は形成時期が新しく,頂上部に北に開いた直径約3.5kmの馬蹄形の大爆裂火口をもっている。溶岩の噴出を伴わない水蒸気爆発により形成された火口と考えられており,この火口からの流下物は,白雪川や鳥越川沿いに遠く日本海岸まで約25kmにわたって分布し,象潟(きさかた)泥流と呼ばれている。象潟泥流の堆積物からなる小丘群は〈流れ山〉と呼ばれ,羽越本線の象潟~仁賀保(にかほ)間の車窓からも見ることができる。
山体の植生はほぼ垂直的分布を示すが,寒帯針葉樹林帯を欠くのが特色である。七合目以上には高山植物が多く,ヒナザクラ,ハクサンオオバコ,チョウカイアザミ,チョウカイフスマなどが見られる。山頂からの展望は雄大で,特に西方の日本海上には飛(とび)島,粟島,佐渡島などが眺められる。一帯は鳥海国定公園に指定されている。1972年,西側山腹に延長約35kmの有料自動車道路(鳥海ブルーライン)が完成した(97年無料開放)。
執筆者:水野 裕
古くは大物忌(おおものいみ)神の神山とされて,北の山などと呼ばれていたらしく,鳥海山という山名は鎌倉時代ころから史料に現れる。平安時代には噴火を繰り返すたびに位階が与えられ,939年(天慶2)には正二位となった。《三代実録》貞観13年(871)の条には,噴火で流出した溶岩泥流の中に大蛇2匹とそれに従う無数の小蛇が見られたとあり,大物忌神の本体は蛇体であったことを思わせる。山上の大物忌神社は出羽国一宮として崇敬されたが,吹浦(ふくら),蕨岡(わらびおか)(ともに山形県飽海(あくみ)郡遊佐町),矢島(秋田県由利本荘市の旧矢島町)などの登山口には里宮が設けられ,中世以降それぞれ鳥海修験の一派をなした。彼らはその檀那場を配札や治病の加持祈禱をして回ったほか,番楽と称する舞楽を伝えて歩いた。遊佐町杉沢に伝わる比山(ひやま)番楽もその一つである。
一方,農民は鳥海山にかかる雲で天候を知ったり,残雪の形で播種や田植の時期を判断し,また山頂付近にある〈御田(おた)〉という場所の水草のはえ具合をみて,その年の豊凶を占ったり,また本社から受けてきた虫札を水口にさして虫よけにするなど,作神信仰の要素が強く見られる。農耕に関連した行事は,各里宮でも見られ,吹浦では〈管粥神事〉,蕨岡では〈お種蒔神事〉,矢島の木境神社では〈除蝗祭〉が行われている。このほか,鳥海山は死者の魂の集まる山ともされ,登拝の際の白衣を納棺する風習もあった。鳥海山の登拝は〈お山のぼり〉〈お山駆け〉といわれ,出羽三山を縦走参拝しても,鳥海山に登らなければ意味がないといわれるほど重視されていた。
執筆者:飯島 吉晴
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
秋田・山形県境にそびえる火山。標高2236メートル(新山(しんざん)頂上)。山頂部は山形県に属す。鳥海火山帯の主峰で、燧ヶ岳(ひうちがだけ)(2356メートル)に次ぐ東北地方第二の高山。日本海岸まで裾野(すその)を引く秀麗な成層・円錐(えんすい)火山で、出羽富士(でわふじ)、秋田富士の名がある。出羽山地上に噴出した火山で、輝石安山岩、橄欖(かんらん)岩と砕屑(さいせつ)物からなる。新旧二つの二重式火山が複合したもので、新火山は七高(しちこう)山(2230メートル)、伏拝(ふしおがみ)岳などの外輪山に囲まれ、北に開いた直径約3500メートルのU字形の爆裂火口内に、新山、荒神ヶ岳(こうじんがたけ)の両中央火口丘(溶岩円頂丘)があり、外輪山との間の千蛇谷(せんじゃだに)は雪渓で名高い。新山は1801年(享和1)に誕生し、享和岳(きょうわだけ)ともいう。旧火山は西鳥海山ともよばれ、笙(しょう)ヶ岳、月山(がっさん)森などを外輪山とし、鍋(なべ)森(1652メートル)、扇子(せんす)森の中央火口丘と、鳥ノ海の火口湖がある。578年(敏達天皇7)の噴火は、553年(欽明天皇14)の阿蘇(あそ)山噴火に次ぐ古い噴火記録で、以後、1821年(文政4)まで十数回の噴火をみた。1974年(昭和49)の小噴火は新山から荒神ヶ岳地域でおき、小規模の火山泥流も発生した。古くから霊峰として信仰登山が盛んで、現在も山頂に鳥海山大物忌神社(ちょうかいさんおおものいみじんじゃ)がある。また中世は修験(しゅげん)道場として発展した。山頂からの展望は雄大で、チョウカイフスマなどの珍しい高山植物も豊富である。南麓ではイヌワシの生息が確認され、環境省猛禽(もうきん)類保護センターが設置されている。春スキーも楽しめる。一帯は鳥海国定公園域で、吹浦(ふくら)―鉾立(ほこたて)―象潟(きさかた)を結ぶ自動車道路鳥海ブルーラインも通じる。登山コースは象潟口、矢島口、吹浦口、湯ノ台口などがあるが健脚向きであり、海に近い独立峰のため気象の変化が激しく、登山には注意を要する。
[諏訪 彰]
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出典 日外アソシエーツ「事典 日本の地域遺産」事典 日本の地域遺産について 情報
出典 日外アソシエーツ「事典・日本の観光資源」事典・日本の観光資源について 情報
※「鳥海山」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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