鳥居清倍(読み)とりいきよます

精選版 日本国語大辞典 「鳥居清倍」の意味・読み・例文・類語

とりい‐きよます【鳥居清倍】

江戸中期の浮世絵師初世清信長男。弟ともいう。清信に比べて描線に柔らかみと生気が加わり、丹絵漆絵による役者絵美人画に優れた作がある。代表作市川団十郎の竹抜き」など。生没年未詳。

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デジタル大辞泉 「鳥居清倍」の意味・読み・例文・類語

とりい‐きよます〔とりゐ‐〕【鳥居清倍】

江戸中期の浮世絵師。初世。俗称、庄二郎。鳥居家2代目に擬せられる。清信の長男とも弟とも伝えられる。丹絵たんえ・漆絵による、すぐれた役者絵・美人画を残した。生没年未詳。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「鳥居清倍」の意味・わかりやすい解説

鳥居清倍
とりいきよます

江戸中期の浮世絵師。初代と2代がある。

初代

生没年未詳。鳥居派の始祖・初代鳥居清信と並び称される初期鳥居派の代表的絵師。清信の子とされるが確証はなく、兄弟あるいは同一人ともいわれる。1710年(宝永7)ごろから本格的に活躍、15年(正徳5)ごろを頂点として、清信様式を発展させた勇壮感に満ちた役者絵、洗練された優美な美人画を多作した。そのほとんどは丹絵(たんえ)とよばれる筆彩色作品で、代表作に『市川団十郎の竹抜き』、『草摺引(くさずりびき)』『暫(しばらく)』『象引(ぞうひき)』『遊女と禿(かむろ)』などがある。20年ごろに早世したものと推測される。

[浅野秀剛]

2代

生没年未詳だが、一説に1706―63年。初代清信の養子女婿、実子説もある)で、鳥居家2代目当主とされる絵師。初代清信・初代清倍没後、2代清信とともに鳥居派の中心として、紅絵、漆絵、紅摺(べにずり)絵に活躍した。

[浅野秀剛]

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改訂新版 世界大百科事典 「鳥居清倍」の意味・わかりやすい解説

鳥居清倍 (とりいきよます)

江戸中期の浮世絵師。生没年不詳。元禄(1688-1704)末年から享保(1716-36)初年にかけての18世紀初頭,役者絵や美人画,花鳥画の版画(墨摺絵,丹絵)に,多くの傑作を生んだ。荒事(あらごと)歌舞伎の豪放な演技を写すにふさわしい〈瓢簞足(ひようたんあし),蚯蚓描(みみずがき)〉と呼ばれる描法は,清倍の創案にかかるかと推定され,役者絵を専門とする鳥居派の様式形成に大きく貢献した。鳥居家初代の清信との関係は明らかでなく,兄弟あるいは息子,さらに同一人とみる説もある。代表作に《市川団十郎の竹抜五郎》(大々判丹絵,東京国立博物館),《金太郎と熊》(大々判丹絵,ホノルル美術館)などがある。なお,最近では,鳥居家2代をついだ清倍は,初世清信の長女に入婿したといわれる2世清倍(1706-63・宝永3-宝暦13)とみる説が有力である。享保後半から宝暦(1751-64)にかけて漆絵,紅摺絵による細判の役者絵を多く描いた。
鳥居派
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百科事典マイペディア 「鳥居清倍」の意味・わかりやすい解説

鳥居清倍【とりいきよます】

江戸中期の浮世絵師。生没年不詳。通称庄二郎。初世鳥居清信の長男(弟とも)。清信の雄渾(ゆうこん)な画風に艶麗な趣を加えて,鳥居派様式を完成させた。起伏に富む柔らかな墨線を駆使して,役者絵のみならず豊麗な美人画も描いた。代表作《市川団十郎の竹抜き五郎》《蚊帳の内外》等。2世清倍〔1706-1763〕は女婿。
→関連項目丹絵

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「鳥居清倍」の意味・わかりやすい解説

鳥居清倍
とりいきよます

江戸時代中期の浮世絵師。一説に,清倍は初代清信の長男で鳥居家2代を継ぎ,正徳6 (1716) 年5月 25日に 23歳で没したとされるが,清信との関係については不明な点が多い。清倍の作品は,いずれも初代清信よりも筆致が伸びやかで,役者絵 (→芝居絵 ) には壮快美が表現され,清倍自身が「日本嬋娟 (せんけん) 画」と称した美人画では,抒情味あふれる女性美が描かれている。このことは彼によって鳥居流の画風が確立したことを示す。主要作品『義経と静』『市川団十郎の竹抜き五郎』『鳥持ち美人に箱持ち娘』『立美人子供抱き』。なお2代清倍 (1706~63) は初代清信の門人で,師の長女と結婚。主要作品『瀬川菊之丞の女鳴神』。

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