精選版 日本国語大辞典 「鱗」の意味・読み・例文・類語
うろこ【鱗】
〘名〙
① 魚類、爬虫(はちゅう)類、哺乳類の一部などの表面をおおい、体を保護している小片。魚類のものは真皮の変化したもの、爬虫類のものは表皮が角質化したもの、哺乳類に属するセンザンコウのものは表皮が化骨してできたものとされる。いろこ。いろくず。うろくず。こけ。こけら。
※玉塵抄(1563)二四「鯉などもうろこが黄な金のやうにひかるぞ」
② 魚類一般をさす称。特に、鯉(こい)をさしていうことがある。さかな。
※海道記(1223頃)手越より蒲原「屋上に鱗を葺(ふけ)り」
③ 頭のふけ。〔浜荻(仙台)(1813頃)〕
※咄本・聞上手(1773)幽霊「をを、白むくがなくても、うろこの半てんで」
⑤ 鱗の形をした紋所の名。丸に一つ鱗、北条鱗、赤垣鱗、二つ鱗などの種類がある。うろこがた。

⑥ (鱗が並んだとき、三角形にみえるところから) 三角形のこと。または三角形のしるし。うろこがた。
※滑稽本・浮世床(1813‐23)初「◯(まるいもの)や△(ウロコ)や、いろいろな切(きっ)かけをして」
⑦ (△のしるしであらわすところから) 荒物屋、魚屋、畳屋、履物屋などが用いた三の数の符丁。〔特殊語百科辞典(1931)〕
⑧ (客の最も多い娼妓はその名簿の上に△の印をつける風習があったところから) 評判の高い娼妓の異称。はやりっこ。
※狂歌・古今馬歌集(1805)上「おやまにうろこてふ名ある事を聞侍りて、うろことはいかなるものとよく見ればさも恐ろしき爪の長もの」
⑨ (能楽、芝居などで、嫉妬して怒る鬼女が鱗形の模様のついた衣装を着ていることが多いところから) 妻、女房をののしり、またはいやしめていう語。
⑩ (劇場の平土間の後方に△形の席が一つあり、これに無料の客を入れたところから) 無料入場するときの手札。または無料入場者。
⑪ 「うろこそうば(鱗相場)」の略。
いろくず いろくづ【鱗】
〘名〙
① 魚類、爬(は)虫類などの体の表面をおおう堅い小片。うろこ。いろこ。うろくず。こけら。こけ。
※十巻本和名抄(934頃)八「鱗 唐韻云鱗〈音隣 伊路久都 俗云二伊侶古一〉魚甲也」
② うろこをもった生きもの。魚や龍などをいう。いろこ。うろくず。
※公任集(1044頃)「みな底に沈める底のいろくずをあみにあらでもすくひつる哉」
[語誌](1)イロはざらざらした細かいものの意で、クヅは屑かという。もともと鱗(うろこ)を意味する語で、同義のイロコと併用される一方、より正式の語と意識されていたらしい。のちに魚類を表わすようになり、一三世紀ころには鱗の意味はイロコが表わすようになる。
(2)一四世紀ころからウロクヅが見えはじめ、一六世紀には優勢となり、イロクヅは文章語・歌語などに用いられる雅語となった。
(2)一四世紀ころからウロクヅが見えはじめ、一六世紀には優勢となり、イロクヅは文章語・歌語などに用いられる雅語となった。
うろくず うろくづ【鱗】
〘名〙
① =うろこ(鱗)①
※玉塵抄(1563)二四「かわらをかさねてしいたはうろくづをたたうだ如なぞ」
② 「うろこ(鱗)①」を持つものの総称。
③ 「うお(魚)」の異称。
[語誌]古くはイロクズ。イロクズからウロクズへと語形変化が起こったのは中世で、近世までにはウロクズの方が優勢となる。
いろこ【鱗】
〘名〙 (後世は「うろこ」)
① =いろくず(鱗)①〔十巻本和名抄(934頃)〕
② =いろくず(鱗)②
③ (魚のうろこに似ているところから) 頭のふけ。いろこくず。
※十巻本和名抄(934頃)二「雲脂 墨子五行記云 頭垢謂二之雲脂一〈和名加之良乃安加 一云二以呂古一〉」
こけら【鱗】
〘名〙 (「こけら(
)②」からか) うろこ。魚や蛇などの表面をおおっている細片。こけ。

※御伽草子・鼠の権頭(古典文庫所収)(室町末)「こけらとれかね、ふてぎわにてめいわく申候」
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報