鰐淵寺(がくえんじ)(読み)がくえんじ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鰐淵寺(がくえんじ)」の意味・わかりやすい解説

鰐淵寺(がくえんじ)
がくえんじ

島根県出雲(いずも)市別所町にある天台宗別格本山。浮浪山(ふろうさん)一乗院(いちじょういん)と号する。寺伝によると、594年(推古天皇2)、智春上人(ちしゅんしょうにん)が境内の浮浪堂に天皇の眼疾平癒を祈って(あるいは当地の霊水を用いて)治したことによって開創されたという。寺名は、智春が祈願中に碗(わん)器を滝壺(たきつぼ)に落としたところ、鰐魚ワニ)がそれをくわえて出たのによると伝える。中世には多くの寺領荘園(しょうえん)を有して寺勢盛んであったが、とくに南朝とのゆかりが深かった。出雲(いずも)三十三番札所の第3番霊場。現在、2万4000坪(約7万9200平方メートル)の寺域に根本堂、蔵王(ざおう)堂その他の堂塔がある。寺宝は多く、鎌倉時代の観音像、経筒、湖州鏡、毛利元就(もうりもとなり)画像、頼源僧都(らいげんそうず)譲状、後醍醐(ごだいご)天皇および後村上(ごむらかみ)天皇の宸筆願文(しんぴつがんもん)、名和長年(なわながとし)執達状などがあり、以上はすべて国の重要文化財に指定されている。弁慶が修行した寺とされ、10月に弁慶まつりが行われおり、また紅葉の名所としても知られる。

[田村晃祐]


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