(読み)くじら

精選版 日本国語大辞典 「鯨」の意味・読み・例文・類語

くじら くぢら【鯨】

[1] 〘名〙
クジラ目に属する哺乳類のうち大型の種類の総称。小型の種類をイルカというが明確な区別はない。体長約六~三〇メートルで現存動物中、最大の種を含む。形は魚形で遊泳に適し、前肢はひれ状、後肢は退化、尾は尾びれ状。魚と異なり尾びれは水平に広がる。皮膚には毛もうろこもなく、皮膚下に厚い脂肪層が発達し体温を保つ働きをする。胎生で一産一子。魚やオキアミなどを食べる。歯があるハクジラ類と、歯がなく代わりにくじらひげのあるヒゲクジラ類とに分けられ、前者にはマッコウクジラツチクジラなど、後者には最大種のシロナガスクジラセミクジライワシクジラなどがある。水面に浮き上がって呼吸するさい鼻孔から呼気と共に海水を吹き上げるので、俗にクジラが潮を吹くといわれる。肉は食用にし、脂肪から油をとり、くじらひげや歯は工芸品に用いられていた。南北両極の海洋に多く、日本近海にも分布。乱獲のため、とくに大型の種は生息数が激減した。いさな。いさ。《季・冬》
※古事記(712)中・歌謡宇陀の 高城に 鴫羂張る 我が待つや 鴫は障(さや)らず いすくはし 久治良(クヂラ)障る」
※俳諧・落日庵句集(1780頃か)「既に得し鯨や逃て月ひとり」
② (①の背が黒く、腹が白いところから) 片面を白、片面を黒色の布を用いて縫いあわせること。また、そのもの。転じて、白黒に限らず、両面にちがった色の布を用いる場合にもいう。
※洒落本・角雞卵(1784か)居続の契約「黒じゅすにひどんすをくじらにした中巾帯をしどけなく結び」
③ 「くじらみ(鯨身)」の略。
※雑俳・柳多留‐二三(1789)「本阿彌は鰯は見れど鯨見ず」
④ 「くじらひげ(鯨鬚)」の略。
※万金産業袋(1732)一「高てうちん 鯨の弓をかくる」
※めのとのさうし(14C中か)「くじら。くはの物さしに。柳のかき板を御もちひ候」
⑥ (①の目が細いところから) 目の細い人をいう。〔東京語辞典(1917)〕
[2] 「くじらざ(鯨座)」の略。
[語誌](1)「十巻本和名抄」や「新撰字鏡」はクヂラ、「観智院本名義抄」にクヂラ・クジラの両形、古本節用集類はおおむねクジラ、「日葡辞書」も「Cujira(クジラ)」というように、「クヂラ」から「クジラ」へという傾向がうかがえる。
(2)くじらの古名としては「万葉集」の「鯨魚取(いさなとり)」からイサナ、「壱岐風土記逸文」のイサなどが知られている。
(3)→「くじら」

げい【鯨】

〘名〙
① 寺院のつりがね。梵鐘(ぼんしょう)
※連歌新式追加並新式今案等(1501)和漢篇「一、万物異名、就本体其季、但可本体外事、仮令金烏は日〈略〉霜蹄は馬、鯨は鐘〈如此之類〉可連歌異名之物例
② くじら。特に、雄のくじら。

いさ【鯨】

〘名〙 =いさな(鯨)〔仙覚抄(1269)〕

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デジタル大辞泉 「鯨」の意味・読み・例文・類語

くじら〔くぢら〕【鯨】

クジラ目の哺乳類の総称。76種などに分類される。世界の海洋や一部の大河川に分布。一般に体長4メートル以下の小形種をイルカとよぶ。体は魚型で前肢はひれ状、後肢は退化し、尾は水平に広がった尾びれとなっている。肺呼吸する際、吐く息とともに付近の水を吹き上げ、潮吹きとよばれる。歯はなくて鯨ひげをもつヒゲクジラ類(ナガスクジラなど)と、歯をもつハクジラ類(マッコウクジラなど)に大別される。生息数が激減したため国際条約で保護される。いさな。 冬》「―よる浜とよ人もただならず/紅葉
くじらじゃく(鯨尺)」の略。
[類語]鬚鯨長須鯨白長須鯨背美鯨座頭鯨歯鯨抹香鯨しゃち海豚いるか儒艮じゅごん

げい【鯨】[漢字項目]

常用漢字] [音]ゲイ(慣) [訓]くじら いさな
クジラ。「鯨肉鯨油/巨鯨・白鯨・捕鯨
大きいことのたとえ。「鯨飲鯨波
[難読]鯨魚いさな鯨波とき

いさ‐な【鯨/魚】

《枕詞「いさなとり」の「いさな」を「勇魚」と解してできた語》クジラの古名。いさ。〈書言字考節用集〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

動植物名よみかた辞典 普及版 「鯨」の解説

鯨 (クジラ)

動物。クジラ目の動物の総称

出典 日外アソシエーツ「動植物名よみかた辞典 普及版」動植物名よみかた辞典 普及版について 情報

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