鯨志(読み)ゲイシ

デジタル大辞泉 「鯨志」の意味・読み・例文・類語

げいし【鯨志】

江戸中期の動物学書。1巻。梶取屋かんとりや治右衛門(山瀬春政)著。宝暦8年(1758)成立。同10年刊。鯨の名義用途などを、挿絵入りで古来からの伝聞実地観察両面から論じたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「鯨志」の意味・読み・例文・類語

げいし【鯨志】

江戸中期の動物学書。一巻。楫取屋治右衛門撰。宝暦八年(一七五八)成立、同一〇年刊。鯨(くじら)に関し、その名義、体の各部分の用途などを、古来の伝聞と実地の観察の両面から論じたもの。画工による挿絵を適宜用い、それに説明を付した。戸田旭山などによる序がある。

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改訂新版 世界大百科事典 「鯨志」の意味・わかりやすい解説

鯨志 (げいし)

日本最初に版本となった鯨専門書。紀州和歌山の薬店主梶取屋治右衛門の著作。1巻1冊。1760年(宝暦10)刊。治右衛門は,姓は山瀬,名は春政,号は如水軒という。稲生若水に本草を学ぶ。治右衛門は紀州という地の利を得て,実見した資料を基に《鯨志》をつくった。本書は,はじめにクジラについて通論し,次いで14種のクジラを図説している。その図説はかなり動物学的に優れている。図は画工が,クジラを実見し,写生したものがもとになっている。来日したP.F.vonシーボルトは日本のクジラに関心をもち,門人の高野長英,石井宗謙岡研介たちにクジラに関する論文を書かせた。シーボルトは,論文から得た知識を自著《日本Nippon》(1832-52),《日本動物誌Fauna Japonica》(1833-50)で利用している。岡研介は《鯨志》の大部分を蘭訳し,《紀州産鯨について》という論文として,シーボルトに呈出した。
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百科事典マイペディア 「鯨志」の意味・わかりやすい解説

鯨志【げいし】

日本で最初の鯨に関する専門書。和歌山の本草学者,薬種商山瀬春政(通称梶取屋治右衛門)の著書。1巻1冊。1760年刊。実地の見聞に基づいてクジラ14種を図示説明。一動物群の科学的図説として日本最初のもの。

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世界大百科事典(旧版)内の鯨志の言及

【岡研介】より

…のち友人坪井信道のすすめで江戸に出る途次,大坂で同郷の先輩斎藤方策と会い,そのまま大坂に開業,郷里岩国侯に召されて大坂を去ったが,そのころから精神病を発して没した。著書に日本最初の生理学総論書《生機論》(1831成稿)や,シーボルトに提出した論文《紀州産鯨についての記述》(梶取屋治右衛門《鯨志》の蘭訳)がある。【宗田 一】。…

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