鮨・鮓・寿司(読み)すし

精選版 日本国語大辞典 「鮨・鮓・寿司」の意味・読み・例文・類語

すし【鮨・鮓・寿司】

〘名〙 (形容詞「酸(す)し」から)
① 食品、料理の名。魚介類を塩蔵して自然発酵させたもの。また、酢飯に魚介類などの具を配したもの。前者には、発酵を早めるために飯を加えた熟鮨(なれずし)があり、後者には、飯と酢を加えた早鮨(はやずし)一夜鮨(いちやずし)散らし鮨蒸鮨握鮨のほか、海苔(のり)で巻いた巻鮨や、油揚で包んだ稲荷(いなり)鮨などがある。《季・夏》
正倉院文書‐天平六年(734)尾張国正税帳「進上交易白貝内鮨壱斛伍斗」
※米沢本沙石集(1283)九「大なる鮎三十許取て返て、少々煮て食ひ候ふ。残りは鮨(スシ)にしておき候ふ」
② 「すしづめ(鮨詰)②」の略。
※評判記・雨夜三盃機嫌(1693)下「押合群集前前(さきへさきへと)詰、立膝究屈只是鮨(スシ)
[語誌](1)「延喜式」には、諸国の貢物として伊勢の鯛(たい)鮨、近江の鮒(ふな)鮨、三河の貽貝(いがい)鮨、讚岐の鯖(さば)鮨など、多くの鮨が見られる。これらは魚介類を塩蔵したものと考えられる。
(2)これに、発酵を早めるため飯を加えるようになったのは、慶長年間(一五九六‐一六一五)頃からといわれる。
(3)近世に入ると、飯に酢を加えて酢飯とし、魚介類をその上に重ねて漬ける早鮨(一夜鮨)が現われた。これの、ほとんど発酵していないものが、今日の押鮨箱鮨である。ここに至って、鮨は必ずしも発酵したものに限られなくなった。
(4)文化・文政年間(一八〇四‐三〇)頃、江戸で握鮨が登場、大流行した。
(5)表記については、「十巻本和名抄‐四」に「鮨〈略〉和名須之 鮓属也」とあり、「鮨」と「鮓」は同義に用いられていた可能性がある。ただし、飯の中に魚介類を入れて漬けるのが鮓で、魚介類の中に飯を詰めて漬けるのが鮨であるともいわれる。なお、「寿司」という表記は、縁起をかついだ当て字と考えられ、近代以降のものである。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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