魚袋(読み)ぎょたい

精選版 日本国語大辞典 「魚袋」の意味・読み・例文・類語

ぎょ‐たい【魚袋】

〘名〙 朝廷伺候の高級官人の地位標示の魚形の符。唐制にならって朝服につけたが、通常の束帯にはつけないで、特に節会大嘗会御禊などの儀式に際して用いた。鮫皮包みの長方形の小箱で、表面殿上人は銀、公卿は金の魚形をつけ、紐で石帯の右腰に下げるのを例とした。金魚袋は三位以上の者が用い、銀魚袋は四位・五位の者が用いた。中国、隋・唐代に始まった魚符の制を模したもの。→魚符
菅家後集(903頃)叙意一百韻「魚袋出垂釣、換叩舷」 〔旧唐書‐輿服志〕

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デジタル大辞泉 「魚袋」の意味・読み・例文・類語

ぎょ‐たい【魚袋】

古代以来、節会せちえ大嘗会だいじょうえ御禊みそぎなどの儀式において、束帯を着用した際に石帯の右腰につけた飾り具。木製の箱を白鮫しろざめの皮で張り、金あるいは銀製の魚の形を表に六つ、裏に一つつけ、紫または緋の組紐をつけた。金魚袋は親王および三位以上、銀魚袋は四位・五位の者が使用。中国唐代の魚符を模したもの。

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改訂新版 世界大百科事典 「魚袋」の意味・わかりやすい解説

魚袋 (ぎょたい)

平安時代以降の礼装,束帯を構成する要素の一つで,石帯に下げた装飾品。サメ皮を張った長方形の小箱に金または銀の魚形をはりつけたもので,三位以上は金魚袋,五位以上は銀魚袋とされた。中国唐代の官制には魚符の制があり,朝廷に出入りする官吏はすべて官職氏名を記入した魚形の金属板を携えていた。これには金,銀,銅の区別があり,三品以上は金,五品以上は銀,六品以下銅とされたが,奈良時代の〈衣服令〉では,これにならって位袋(いたい)が定められた。位袋は色および腰につるす緒の色の組合せによって位階を区別するもので,袋の中に宮中出入りの門鑑に用いる魚形の金属板が入れてあった。しかし位袋の制度は701年(大宝1)から722年(養老6)までの22年間施行されただけで,その後は停止された。魚袋は位袋の名残をとどめているものといえ,平安時代初期の835年(承和2)ころから礼装に使われた。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「魚袋」の意味・わかりやすい解説

魚袋
ぎょたい

公家(くげ)服装の付属品。朝服である束帯着用のときに腰に帯びる。中国、唐の魚符の制に倣ったもので、朝廷に出入するときの証契(通行証)が装飾品となった。着け方は肥瘠(ひせき)により異なるが、普通、石帯の第一、第二の石の間に結んで右腰に下げる。古代には、金または銀の魚形を位袍(いほう)と同じ生地でつくった袋に入れ、その紐(ひも)の結び数で階級の上下を分けたが、のちには、鮫皮(さめがわ)で包んだ小さな箱の表側に金または銀製の小さな魚の形6個、裏側に1個を飾り、その上に紫か緋(ひ)の組紐をつけた。金の魚袋は諸王および諸臣の三位以上、銀の魚袋は四位、五位の者が用いた。

[高田倭男]

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普及版 字通 「魚袋」の読み・字形・画数・意味

【魚袋】ぎよたい

唐代、官吏の身分を証する魚符を入れた袋。宋代は袋だけを用いる。〔宋史、輿服志五〕魚袋、其の制、より始まる。蓋(けだ)し以て符と爲すなり。其の始は魚符と曰ふ。~宋、之れに因る。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「魚袋」の意味・わかりやすい解説

魚袋
ぎょたい

平安時代以来,束帯姿のとき,右腰に下げて用いた装飾具。3×1× 0.5寸 (9×3× 1.5cm) の木箱に白いさめの皮を張り,金,銀の魚形の金具をつけ,紫または緋色の組紐をつけた。大嘗祭 (だいじょうさい) や節会の際に,参議以上および諸王は金装の,四位,五位の殿上人は銀装の魚袋をつけた。中国の唐代に,諸臣が宮中へ出入りする際,あかしとして用いた魚形の随身符を模したものといわれる。

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